ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
18


それからも、毎日、朱花は僕の前で竜に変身し、空を泳ぐところを見せてくれて……
でも、やっぱり僕は何も出来ず、ただ、朱花と他愛ない話をするだけの毎日となっていた。
でも、そのおかげで、朱花のことも一層良く分かるようになってきて、朱花への想いはなおさら強いものになっていた。
本当の僕のことも打ち明けたかった。
だけど、それだけは絶対に言っちゃいけないって、桂葛さんに言われてたから、そこはなんとか我慢した。



やがて、僕の家も完成し…嬉しいものの、やっぱり一人暮らしはまだ慣れなくて、相変わらず僕は桂葛さんの家に泊まったり、桂葛さんが泊まりに来てくれてたりしている。
窓を開けたら見える程度の近さなのに……



そんなある日のことだった。







「あれ?また家を建てるの?」

「あぁ、村はずれの左門さんの家が古くなったから立て直すらしい。
あの人、どうしてもあの場所に住みたいらしいんだ。」

僕らの傍では竜に変身した大工さん達が木を切り倒していた。



「そうなんだ…でも、そんな……」

その時、今まで聞いたこともないような竜の雄叫びが聞こえて、僕が振り返ると、今まさに大きな木が僕らの方に向かって倒れて来ているところだった。



「あ、あぶないーーー!!」

僕は、咄嗟に朱花のことを考えた。
彼女を守らないと……!!



(あぁ……)



背中に鈍い痛みを感じて、僕は目を開いた。



なにかがおかしい……
朱花は驚いたように大きく目を見開いて僕を見上げてて……



そうだ…僕と朱花は身長もそう変わらないのに、なぜ……



「翔!出来たじゃないか!!」

『え…?』

「翔、そのまま空に向かって泳ぐんだ!」

『え…ぼ、僕、そんなこと……』



そういえば、僕の声はなぜだか声として出ていない。



「翔!さぁ!!」

朱花が竜に変身し、空に舞い上がった。
僕は、今の状況がよくわからないまま、朱花の後に続いた。



(あ……う、浮かんでる…
僕の身体が……!)



のろのろとした動きだったけど、僕は空に向かって行った。
だんだん小さくなる地上の風景にちょっと不安になりながら、僕は朱花を追って、空高くに飛び上った。



『どうだ?空は身持ち良いだろう?』

『どうなってるの?なぜ、僕はこんなところに…?』

『……困った奴だな。ついてこい!』

風を切ってどんどん先に行ってしまう朱花を見失わないように、僕は懸命に彼女の後を着いて行った。



『ほら、見てみな。』

朱花が僕を連れて行ったのは大きな湖の上空だった。
深く青い湖面には、寄り添う二頭の竜が映ってた。



『まさか…!』

『そうだ。
おまえは竜になれたんだ!』


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