ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
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「じゃあ、まずは見てなよ。」

そう言うと、朱花は立ち上がり、空をみつめたかと思うと、朱花の姿は竜になって、空高く飛び去った。
こういうシーンはもう何回も見たけれど、いつ見てもすごい。
人から竜に変化する家庭がすごく滑らかなんだ。
きっと動画で撮影して、それをコマ送りにでもしたらよくわかるのかもしれないけど、肉眼で見てると感動するくらい自然な変身なんだ。
僕にもあんなことが出来るなら…そして、空をあんな風に優雅に泳ぐことが出来たら、どんなに気持ち良いだろうって思うけど、
僕にはとても無理だ。
皆は、ただ竜に変わりたいと思うだけで出来るみたいなことを言ってたけど、僕がどんなに強くそう願ってもやっぱり何の変化も現れなかった。



『翔…空は気持ちが良いぞ。
おまえも来いよ。』

竜になった人の声は、心に直接入って来る。



「無理だよ〜!」

それに対して、僕は空に向かって大きな声を張りあげる。



朱花は、本当に気持ち良さそうに空を駆け巡る。
ぐんぐん上がって行ったかと思うと急降下を始めたり、まるで風にそよがれるみたいにふわふわ浮かんでいたり……
その姿はずっと見ていても見飽きない。



しばらくすると朱花は地上に向かって降りて来て、地上に降りる直前に人の姿に戻った。



「おかえり。」

「あぁ、楽しかった。」

「……空を泳ぐのはそんなに楽しいもんなの?」

「そうだな。少々いやなことがあったって、空を泳ぐとそんなこと、すっかり吹き飛んじまう。」

「そっか〜…」

「人の姿で地上にいるより、竜になって泳いでる方がずっと快適だぞ。
今ではもう主様しかいないけど、本来の竜神族はずっとそうやって生きてたみたいだからな。」

「人の血が混じってから、こんな風に里を作って暮らすようになったんだね?」

「そういうことだ。」

竜神族は、竜の身体と人間の身体をうまく使い分けてる。
大工さん達も、木材が必要になったら竜になって木を倒し、ゆうゆうと運んで来る。
だから、本当なら僕の家だってもっと早くに建つはずだったんだけど、わざわざ僕に運ばせたりしたもんだから、こんなに時間がかかったんだ。


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