ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
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「じゃあ、行こうか。」

食事の後片付けが済んで、作業に戻ろうと思ったら、朱花が僕を外に連れ出した。



「どこに行くのさ?」

「裏山だ。」

「裏山って…本当に良いの?
仕事をさぼって、親方に叱られない?」

「これは、親方から頼まれた仕事だ。」

僕達は一時間程かけて裏山に向かった。
さらに、そこから時間をかけて山を登る。
以前ならきっと息が切れてくたくたになってたと思うけど、僕もそれなりに体力がついたのか、このくらいのことは平気になっていた。



「さて…と。
このあたりで良いかな。」

頂上の拓けた場所に着くと、朱花はその場所に腰を降ろした。



「おまえも座れよ。」

「う、うん。」

朱花がなにをするつもりなのか、僕には見当もつかなかった。



「まず、教えてくれ。
竜の力を失ったのはいつのことだ?」

「え…そ、それは……」

何と答えれば良いのかわからなかった。
口籠った僕は、唐突にひらめいたことを口にした。



「そのことは、桂葛さんに誰にも言うなって言われてるんだ。
だから、今は言えない。」

「そうか、桂葛に許可をとれば話してくれるんだな?」

「う、うん。」

朱花はそれで納得してくれた。



「これから、私がおまえの竜の力を取り戻せるように手伝う。
環境を変えれば、何か良い影響があるのではないかと言われておまえはこの里に来たのだろう?
だけど、もう一年近く経つのに何の変化もない。
やっぱりただ待ってるだけじゃだめなんだ。
父さんが、同じくらいの年の私となら気を遣うこともないだろうし、うまくいくんじゃないかって言うんだ。それで……」

「そうだったんだ……」

親方がそんなに僕のことを考えていてくれたなんて、思いもしなかった。
仕事中は大半が小言ばかりだったから。
でも、そんなことしてもきっと僕には何も出来ない。
僕には今までに不思議な力を感じたことはなかったし、人間の世界でずっと育って来たことも関係するかもしれないし、元々そういう力もないんじゃないかと思う。
だけど、そんなことは朱花には言えない。
そのことが、僕の心を曇らせた。


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