ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
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「……どう?」

「うん、形はも一つだけど、味はまぁまぁだね。
ひっくり返すのが少し早かったんだ。
もう少ししっかり火が通ってからひっくり返すと、綺麗に負けるよ。」

「う、うん!わかった。」

僕は、卵焼きを再び焼き始めた。
僕の家もようやく完成に近づき、僕の仕事も少し暇になって来て、このところ、僕はみんなの昼ご飯の準備をするようになった。
親方の娘さんの朱花(しゅか)と一緒に、十数人分の昼ご飯を作るんだ。
朱花は僕と同い年だけど、僕なんかよりずっとしっかりしてて、親方同様とても厳しい。
そのおかげで、僕の料理の腕も上がったと言えるかもしれないけど。



でも、厳しいけど、優しいところもあって、そして…けっこう可愛いんだ。
僕が密かに片思いをしてた3組の岡本さんにちょっと似たところもあって、一緒にいるとたまにどきっとすることもある。



「朱花、帰ったぞー!」



「あ、父さんだ。
翔、早く早く!
待たせちゃ、父さんの機嫌が悪くなる。」

「うん、わかった!」

僕は慌てて卵焼きをひっくり返した。







「父さん、今日の卵焼きは翔が焼いたんだよ。」

「そうか、道理で形が良くないと思った。」

その一言にまわりのみんなが笑った。



「でも、味は良い。
きっと味覚は良いんだな。」

「野菜の皮むきもずいぶんとうまくなったよ。」

「そうかそうか、そりゃあ良かったな。」

親方の笑顔を見てると、なんだかほっとした。
こんなことをさせられるのは、大工としては役に立たないからじゃないかって不安になってたから。



「なんだ、朱花、翔にいろいろ教えて婿にでもするつもりか?」

「朱花が大工の跡を継いで、翔が家のことをするっていうのも良いかもしれないぜ。」

大工さん達の冗談に僕は恥ずかしくなって俯いた。



「そりゃあ、良い考えだ!
父さん、そうしても良いかい?」

朱花までが調子を合わせるから、笑い声はますます大きくなって、僕は顔をあげられないでいた。


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