ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
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「そうか…じゃあ、しばらくはここに住むか?」

「えっ?良いんですか?」

「あぁ、おまえさえそれで良いなら構わない。」

「じゃあ、そうさせて下さい。
お願いします!」

僕は今まで一人暮らしはしたことないし、しかも、ここはなんだかよくわからない異世界だ。
そういうところでひとりぼっちでいるのは心細かったから、桂葛さんと一緒にいられるのはありがたかった。



「おまえ、料理は出来るのか?」

僕はまた首を振った。



「……そうか。」

桂葛さんは苦笑した。



「じゃあ、市場へ行こう。」

僕達は市場へ向かった。
すれ違う人々は、僕の事には特に関心はないみたいだ。
服装的には少し浮いてるのに、それほど視線は集まらない。
空には、ごくたまに竜が泳いでる。
桂葛さんの話によると、遠くに出掛ける時は竜になって行った方が早いからだそうだ。
桂葛さんも、普段、神殿に行く時は、竜になって行くらしいけど、今日は僕がいたから歩いて行ってくれたみたいだ。



何度も見たから、少しずつ竜には慣れてきたけれど、それでも、僕は今ここにいることに、まだ実感のようなものが感じられない。
どこか、夢を見ているようなおかしな気分だ。
とはいえ、この世界を否定しているってわけでもない。
否定するには、あまりにも現実的だから。
つまり、僕自身、今のこの状況をどう受け止めたら良いのか戸惑ってるって感じかな。



「翔!どうしたんだ?ぼーっとして……」

「えっ!?あ…あぁ、すみません。」

「何か嫌いなものはあるかって聞いたんだ。」

「嫌いなものですか?
う〜ん…強いていえば、しいたけかな?」

「しいたけ?つまらないものが苦手なんだな。」

市場は、スーパー並みに…とは言えないまでも、それなりのものが並んでた。
ただ、魚はけっこうあるけど、肉類は売ってない。
竜神族は、どうやら肉は嫌いみたいだ。
最近は、スーパーの食品売り場に行くことなんてなかったから、なんだか新鮮で見て回るのはけっこう楽しかった。


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