ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
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「とりあえず、今夜は俺の家に泊まってくれ。
お前の家もすぐに用意するからな。」

「あ、ありがとうございます。」

僕を案内してくれた男性は桂葛(かつら)という人だった。
連れて行かれた桂葛さんの家は、日本の昔の家って感じだった。
広さはそれなりにあるんだけど、家電らしきものはひとつもない。
家具だって、僕が使ってたものとはずいぶん違う。
だけど、一番驚いたのは、桂葛さんは魔法みたいなものが使えること。
桂葛さんは、それを『魔法』ではなく『術』と呼んでたけど…
それで、部屋の中の照明や火を起こすんだ。
それは、竜神族ならだれもが持ってる力らしい。



「桂葛さん……僕はまだ信じられない。」

「……信じられない?竜の国に来たことがか?
それとも、お前が竜神族だということか?」

「どっちもです。」

「まぁ、そうだろうな。
……おまえの出生の秘密については、今日まで聞かされてなかったのか?」

僕は頷いた。



「聞かされたところで、きっと信じなかったと思いますけど。」

「……そうだろうな。
でも、主様からの伝達はなにもなかったのか?」

「主様……?」

「竜神族を取り仕切る…長のことだ。」

「そんなものは……あ……」

言いかけて思い出した。
僕は子供の頃から、ずっと竜と空を飛び回る夢を見ていたことを…
あれが、伝達というものだったのかもしれない。



「どうした?」

「あ、はい。
僕、小さな子供の頃から、竜と空を飛び回って遊んでる夢を見ていて……」

「そうか……」

桂葛さんは、そう言って機嫌の良さそうな顔で微笑んだ。



まだ信じられないとはいえ、僕は不思議と落ち着いていた。
それは、もしかしたら桂葛さんのおかげかもしれない。
なんていうのか、とても穏やかで頼りになる雰囲気の人なんだ。



「とにかく、今夜は早く寝ろ。
明日、主様の所に連れて行く。」

「え…そ、そうなんですか。」

なんだか不安だけど、ここへ来てしまった以上、きっと仕方のないことなんだろう。



「じゃ、おやすみ。」

「おやすみなさい。」





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