ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



「父さん…どうしたの?
それから何があったの?」

「……赤ちゃんが声をあげて泣き出したの!
そりゃあ、もう元気な声で…
それに人形みたいに固くて冷たかった身体が、じんわりと暖かくなって……」

「あの時の驚きと感動は今でも忘れられないよ……
ただ…竜は言ったんだ。
この子は、お前たちに預けるだけだと。
15年経ったら返さなければならないことを詳しく話された。
それでも、僕達はありがたいと思った。
15年なんて、人としては短い時間だけれど、それでも全然育てられないよりはずっとましだって…」

僕は何と言ったら良いのかわからなかった。
父さん達の話はとても信じられない話だ。
竜を見ただけじゃなく、竜と話しただなんて…
しかも、死んだ赤ちゃんが生き返ったなんて……



(あ……)



僕は、その15年が今日過ぎてしまったことに、今更ながら気が付いた。
父さん達の話はとてもじゃないけど現実として受け止められないけど、でも、万一本当だったら……



僕は一体、どうなってしまうんだろう?



「そろそろ出発だ。」

「え…どういうこと?」

父さん達は立ち上がった。



「これから先どうなるかはわからない。
もしも、またあの竜に会えるのなら、僕達は頼むつもりだ。
お前ともう少し長く一緒にいたいと。」

「父さん……」







父さんの運転する車に揺られ、僕達は母さんの実家に向かった。
なんでも、僕を夜中の2時に樹海の傍にある竜神の祠に連れて行くらしい。
それが、竜との取り決めだった。

今でも僕は信じられない想いだった。
でも、父さん達は信じてるからこそ、今、そこに向かってるんだと思う。
いくらなんでも冗談でこんなことはしない。



車の中ではみな、あまり話をしなかった。
今日は朝からあちこちに出かけてたから疲れてもいるだろうに、僕は少しも眠くなかった。
押し黙った気まずい雰囲気の中、車と時間はそんなことはおかまいなしに進んで行って……



あたりはすっかり暗くなり、家の明かりもまばらだ。
その代わりに、空の星が都会よりずっとキラキラ輝いていた。



「もうすぐだ…」





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