ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



「あの森で母さんを見つけ出せたのは、奇跡的なことだと思う。
本当に恐ろしい場所だったよ。
月の光さえ届かない闇の世界で、足元には蛇みたいな木の根が張り巡らされてて…」

「私の名前を呼ぶ声が聞こえたら、途端に私は現実に引き戻された…
森に入った時は死ぬつもりだったから闇もまるで怖くなかったのに、その時にあたりを見渡したら、もう身体が震える程怖くなって、私はありったけの声をはりあげてたの。」

「そのおかげで、僕は母さんをみつけることが出来た。
だけど、そこからが問題だった。
出口がわからなくなったんだ。
どこもかしこも似たような風景で、目印になるものがなにもみつからない。
ふたりでさんざん歩き回ったよ。
でも、どこにも出口はみつからない。
せっかく母さんをみつけだしたというのに、もう歩く力も大きな声を出す気力さえなくなって、僕達はついに死を覚悟した。」

本当に意外だった。
わずかに微笑むことさえなく、思いつめた表情で話す二人……
過去にこんな重大な出来事があったなんて、本当に信じられない想いだった。



「……それでどうしたの?」

僕がそう訊ねると、母さんと父さんは一瞬戸惑ったように顔を見合わせた。



「……僕らがすべてを諦め、木の根っこに三人で並んで座ってた時……
空が急に明るくなって……」

「ヘリが助けに来たの?」

「そうじゃない。
私達は、信じられないものを見た。
眩い光の中には……竜がいたんだ。」

「竜!?」

なにかわからないけど、その言葉を聞いた時、僕の心がざわざわと動き始めた。



「私…最初は幻覚を見てるんだと思ったわ。
だって、この世にそんなものがいるはずないんですもの。
だけど、父さんが小さな声で言ったの。
『竜』って…
だから、私と父さんが同じものを見てるんだってわかったの。
そして、そのうちに、竜の声が聞こえたの。
15歳になったら返さねばならない子供でも、お前たちは大切に育てる気持ちがあるか?と。
私は、咄嗟に答えたわ。
それでも良いって。」

「僕は竜の言う意味がよくわからなくて、それ以前に目の前の竜の姿に戸惑って、何も言えなかったんだ。
だけど、母さんがそれでもいいって言うから、僕もつられて同じことを言っていた。
そしたら……」

父さんは、そう言うと俯いて肩を震わせた。


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