ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



「期待が大きいと、裏切られた時の落胆はそれに比例して大きくなるものだ。
僕達はそれはもう酷いショックを受けた。
……特に母さんの悲しみはたとえようのないものだったんだ。」

「私は、赤ちゃんが死んだことをどうしても受け入れられなかった。
いえ…理性ではわかってたと思う……
でも、感情がそれを認めたくなかったのね……
私は亡くなった赤ちゃんを連れ、家を抜け出して……」

目の前にいる二人が、僕とは血がつながってなかったんだと思うと、急に遠い人みたいに思えた。
そうじゃなくても、二人はいつもとはまるで違って…
本当に別人みたいに見えたから……



「翔……
これから話すことはとても信じられないことだと思う。
私達だって最初は信じられなかった。
でも、お前が今こうしてここにいることが、それこそが真実だという証なんだ。」

「父さん、意味がわからないよ。
一体、何の事を言ってるの?」

「今から話すからしっかりと聞きなさい。」

そう言うと、父さんはテーブルの上のお茶を全部飲み干した。



「母さんがいなくなったことに気付いて、僕達はみんなで探した。
出産は、母さんの田舎でしたんだ。
覚えてないか?
おまえが小さな頃、何度か連れて行ったことがある。」

「……あんまり覚えてない。」

「そうか、まだ小さかったものな……
今のおじいちゃんの家から車で一時間程走った所なんだ。」

僕は本当にその場所を覚えていなかった。
新しくなったおじいちゃんの家のことはもちろん覚えてるけど、その前の家のことはまったく…



「そこは自然に囲まれた場所でな。
母さんの実家の傍には、ものすごく深い森があった。
森というより樹海だな。
何でも、その土地では、その森はあの世に続く森と呼ばれていて、絶対に近付いてはいけないと言われていたらしい。
母さんがいなくなった時、僕は母さんがきっと死ぬつもりだと思った。
そして、きっと、あの森に行ったんだって。」

「この人は本当にカンが良いから…
私の家族は、いくらなんでもあそこには行かないはずだって言ったらしいけど、父さんは自分のカンを信じて、樹海に来てくれたの。
私は事実そこにいた。
赤ちゃんの後を追うつもりだったから……」

ショックだった。
明るい二人に、そんな過去があったなんて考えたこともなかったから。

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