ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ







「母さん、今日はすごく良いお天気ね。」

「そうだね。
暖かくて気持ちが良いね。」

そう答えたシャーリーの母親は、町にいた頃より顔色もずっと良くなり、頬もふっくらとした印象に変わっていた。
シャーリーたちがこの田舎町に越して来てから、早くも三か月程の月日が流れていた。
弟達もようやくこの町の暮らしに慣れ、母親の体調は明らかに良くなってきていた。



「シャーリー、あんたには苦労かけたね。
それに、辛い想いもさせてしまった……」

「いやね、お母さん…急にどうしたのよ。」

「本当に申し訳なく思ってるんだよ。
それに、とても感謝してる……」

そう言いながら、母親は目頭をそっと押さえた。



「お母さん、感謝するなら私じゃなくて、メイスフィールドの旦那様にでしょう?
こんな良い診療所に入れて下さって、しかもあんな大きな家まで……」

「だけど、その代わりにあんたは……」

「やめて!」

シャーリーは自分でも驚くほどの大きな声を上げてしまい、決まり悪そうに微笑んだ。



「ごめんなさい。
でも、それ以上は言わないで…私、辛い想いなんてなにもしてないんだから。
お母さん…そろそろ部屋に戻りましょうか。」

「……そうだね。」

日当たりの良い中庭から廊下に向かった時、二人は思いがけない人物に出会った。



「シ…シャーリー!!」

「リチャード……」

三人は、束の間、まるで時が止まったかのようにその場に立ち尽くした。



「シャーリー…会いたかった!」

リチャードは両手に持った荷物を放り出し、シャーリーに駆け寄ると、その身体を強く抱きしめた。



「リチャード…なぜここに……」

シャーリーの頬は、愛しい人との再会に熱い涙で濡れていた。



「実はね……」

中庭のベンチに腰掛け、リチャードはここに来た経緯を話し始めた。
旅先で病に倒れた父親は、突然、跡継ぎを次男のアレクに決めたと言い出した。
倒れたことで、将来のことを真面目に考えた末の結果だという。
リチャードには商才もなければ、商売に対する情熱も感じられない。
そんな者にわざわざ商売の事を教えるのは無意味だということで、リチャードは家を放り出された。
そして、おまえのようなろくでなしは、少しでも人の役に立てる人間になれるようにと修行しろと、メイスフィールドの知り合いのいる診療所を紹介されてここに来たということだった。

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