ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ






「どうだ?ここなら空気も良いし、この診療所は優秀な医師が揃っていると聞く。
ここにいれば何も心配はない。」

馬車に揺られること、三日間。
ようやくたどり着いたその場所は、自然に溢れたのどかな田舎町だった。



「本当にどうもありがとうございます、メイスフィールド様。」

「しっ!」

メイスフィールドは、口元に人差し指を立て、シャーリーを厳しい視線でみつめた。



「ここでは、スミスだ。
わかっているな?
お前たちがここにいることをリチャードには絶対に知られたくはないのだ。
知ったらあいつは必ずここへ来るだろう。
しつこいようだが……」

「わかっています。
私は決してリチャードに連絡は取りません。
それを約束する代わりに、母さんをこんな立派な診療所に入れていただいたんですもの。
それに、私達の家まで……
あなた様を裏切るような真似は致しません。」

メイスフィールドは、ゆっくりと深く頷いた。



「困ったことがあれば、先程教えたブラウンの所へ連絡するのだ。
ブラウンは私の友人だ。」

「いえ…過分なお金もいただきましたし、これから先は私だけでなんとかやっていきます。
こちらから連絡することはありません。」

「そうか……
では、シャーリー…達者でな。
おまえのおふくろさんが良くなることを祈っている。」

「本当にどうもありがとうございます。」

二人は立ち上がり、固い握手を交わした。
メイスフィールドからほんの少し遅れて、シャーリーは彼の後をついていった。
馬車の所まで、彼を見送るためだった。



「ところ…で……」

なにかを話しかけた時、メイスフィールドは不意に足を停めた。



「メイ…いえ、スミス様、なにか……」

「うっ……」

急にしゃがみこんだメイスフィールドは、口から赤い血を吹き出した。



「ス…スミス様!!
だ、誰かーー!
誰か来て下さいーー!」



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