ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ


「シャーリー、正気なのか!?
君は本気でそんなことを?」

「本気よ。もう決めたの……」

「シャーリー!」

腕を掴み、真っ直ぐにみつめるリチャードの瞳を、シャーリーは見ることが出来なかった。



「ごめんなさい。リチャード……
でも、どう考えても無理なのよ。
あなたと私では身分が違い過ぎる。
それに、こんな私と一緒になったって、あなたは苦労するばかりですもの。
ご両親がお許しにならないのは当然のことだわ。」

「そのことは何度も話し合ったはずだ!
両親のことなら、僕が絶対に……」

リチャードの言葉に、シャーリーは俯いたままで首を振る。



「さようなら、リチャード……
短い間だったけど、私、幸せだったわ。
あなたも、私のことなんて早く忘れて、幸せになってね。」

シャーリーは、リチャードの指をそっと離し、そう言い残して歩き始めた。



「シャーリー……」



今の彼女にはなにを言っても無駄だと悟ったリチャードは、シャーリーの後ろ姿を見送ることしか出来なかった。



(シャーリー…僕は諦めないよ!
絶対に、両親を説得するから……)



リチャードとシャーリーは心の底から信頼し合い、愛し合っていた。
しかし、リチャードは、宝石商を営むこの町の名士・メイスフィールド家の長男…
それに引き換え、シャーリーは名誉も地位もない貧しい家の娘だった。
そればかりではない。
シャーリーの父親はとうの昔に亡くなり、母親は病に冒されていた。
シャーリーは家で仕立てものをしながら、年の離れた弟達の面倒と母親の看病に明け暮れる毎日だった。
そんな二人の交際を、リチャードの両親が許すはずはなかった。


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