ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
剣の意味・6






「今日は本当に良い天気だな。」

「あぁ…そうだな……」



お互いが窓の方を向いて、空を見上げる。
あいつとは、最近ずっとこんな風だ。



だって……照れ臭くて、向き合う事が出来ないんだから。



あいつが危ないと聞かされた時…
俺は無理を言って、あいつに会わせてもらった。
ぐったりとした様子で奴はベッドに横たわり、いつもとはまるで違う力のない視線で俺をみつめてあいつは言った。
おふくろとメアリーのことを頼む…と。

最後の最後まで、そんなことを……
とても、あいつらしい言葉だった。



俺は、詫びた。
あいつのことを信じきれなかったことを…
今、目の前で死に近付いて行っているブラッドは、微かに微笑み……
おまえに見破られるような下手な芝居はしない…と呟いた。



それに……
おまえは、最後の最後で俺を守ってくれたじゃないか…と。



だけど、それがブラッドにこんな酷い傷を負わせたのかもしれないんだ。
もしかしたら、ヒースだってほんの少し怖がらせるだけのつもりだったかもしれないのに、俺が奴を突いたから……
そう思うと、堪えきれずに熱いものが頬を伝った。



あいつは、そんな俺をじっとみつめて…
俺は、おまえがうらやましかった…と、そう言った。
本当は仲良くなりたかったのに、それで素直になれなかった…と。
そう言って、あいつは静かに目を閉じた。



おふくろさんとメアリーのことを託したのは、ブラッドがおまえを信頼してるからだとマックス隊長に言われた時、俺は、涙が止まらなかった。







それが、あいつとの別れだと思っていたのに……あいつは死ななかった。
数日間、意識をなくしていたのにも関わらず、あいつはそれから目を覚まし、そして少しずつ回復し始めた。



「ブラッド…
あの…俺のことがうらやましかったっては話だけど……」

「あぁーーー!」



俺が思い切って聞いたのに、あいつは大きな声を出してそれを遮った。



「な、なんだよ。」

「大きな鳥が…ほら、見てみろよ!」



大きな鳥?
なんだ、ただの鳶じゃないか。
しかも、そんなに大きくもない。
珍しくもなんともない鳶を、俺達はただ眺めて……



馬鹿馬鹿しいと思うけど…でも、こんなことが出来るのも、ブラッドが生きててくれたお陰なんだと、ふと気が付いた。



「……ありがとな。」

「え?な、なにが?」

「だ、だから……あ、あの大きな鳥のこと教えてくれて……」

「え?あ、ま、まぁな……」



今日は言えなかったけど……
ブラッドが、ここを退院するまでには必ず言おう。



俺はこの先どんなことがあっても、おまえを疑うことはしない…と。
これからも、ずっと親友でいてほしい…と。


〜fin〜


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