ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ






(ごめんよ、コハク…
でも、エルンのためにはこうするしかないんだ…)



まだ夜も明けきらない空の下、敷き詰められた藁の上に寝かされ、油をかけられたコハクに、マーティは両手を組んで頭を下げた。



(今までどうもありがとう、さようなら、コハク…)

しゅっという音を立てて、マッチに赤い小さな火が灯る。
その火は油に燃え移り、まるで次々と赤い花が咲いていくようにコハクの全身を走り抜けた。



(長い間ありがとう、エルン…
私、とても幸せだった…)

赤い炎の中で、コハクは最後の涙を流した…







「父さん!コハクがいない!
父さんがどこかへ持って行ったの!?」

血相を変えたエルンが、作業場へ駆けこんだ。



「エルン、朝食は食べたのか?
朝はしっかり食べとかないと良い仕事が出来んぞ。」

顔をあげる事もなく、マーティは抑揚のない声で呟いた。



「父さん!コハクをどこにやった!
返して!
僕のコハクを返して!」

興奮したエルンの掴みかかった手をふりほどきながら、マーティは低い声で呟いた。



「エルン、子供のようなことを言うんじゃない。
……おまえ、今年で確か23だったな。
もう人形遊びをしてる年じゃないだろう。
さぁ、早く朝食を食べて、仕事を始めるんだ。」

「父さん!!ちゃんと答えて!!
コハクをどうしたんだ!どこへやったんだ!」

エルンは再び父親に詰め寄った。



「エルン…私は知ってるんだ…
おまえが、コハクにしていたこと…話してたことを…」

「え……」

エルンの手から、一瞬にして力が抜けた。



「……エルン…コハクは人形だ。
人間でも女でもない。
こんな所におまえを置いていた私が悪かった。
おまえは来月から町に出て、私の知り合いの人形師のもとで修行をするんだ。
もう話はつけてあるから何も心配しなくて良いんだぞ。
町に行ったら、若い女の子がたくさんいる。
おまえは、少々内気だが、見てくれだって悪くない。
すぐに気の合う子がみつかるさ。な!」

マーティは無理な微笑を浮かべ、エルンの肩をぽんと叩いた。


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