ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ






「あ、多分、あそこですよ!」

クラウドは、顎先で眼下に映る朽ち果てた建物の跡を指し示した。



「あぁぁぁ…
誰かさんのせいで馬車に乗れなかったから、すっかり遅くなったじゃない。
もう夕方だよ。
夕食までには隣の町まで辿り着けるんだろうね?」

クラウドの背中でアルルが騒ぐのを見て、ヴェリエルの表情は暗く沈み、カルフは小さな溜め息を吐いた。



「大丈夫ですよ。
ここから、隣町はさほど離れてないってことですから。
さ、急ぎましょう!」



予定通り、次の日の朝早くに宿を発ち、街道を抜けて山道にさしかかった所でアルルの泣き言が炸裂した。
眠い、だるい、足が痛い…
そんな言葉を並べ立てるアルルの前に、クラウドは広い背中を差し出した。
アルルの機嫌の悪さはそれで簡単におさまり、クラウドの背中で鼻歌を歌ったりくだらないおしゃべりに興じるうちに、四人はついに遺跡に着いた。



「どこだろう?
願いを叶える天使像って…」

四人は周囲を見渡した。



「……それにしても、ここはどういった遺跡なんでしょうね?」

相当昔のものなのか、残されているのは建物の土台と壁の一部らしきものだけだけで、そこからは大きさは推測出来てもどんな建物だったのかは創造もつかない。



「あ、あれだ!」

朽ち果てた壁の向こう側に、それはひっそりとあった。
ワインの瓶より一回り程大きく、羽を休めて佇む天使の銅像だ。



「……なんだか地味っていうか、なんていうか…」

カルフは創造していたものとはずいぶん違ったその銅像に小さく首を傾げた。



「ですが、この銅像……」

クラウドは何かを感じたのか、銅像に顔を近付け、天使像をじっくりと眺める。




「確かに…」

アルルもクラウドと同じように天使像をみつめた。



「何なんです、クラウドさん。
その天使像がどうかしたんですか?」

クラウドはカルフに向かってゆっくりと頷く。



「あんたにはわからない?
これは…普通の天使像じゃないよ。」

「普通じゃない……!?」

カルフにはその言葉の意味がわからずただきょとんとした顔を浮かべ、その後ろでヴェリエルはがっくりと膝を着いた。


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