ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ






それから瞬く間に十年の歳月が過ぎ去った。
いつの間にか、エルンの背丈はコハクよりも高くなっていた。
少し前から、エルンは本格的に人形造りの修行を始め、すでに何体かの人形を作造り出していた。
もちろんそれらはコハクよりずっと小さく簡単な造りのものだったのだが…



「エルン、どう?
人形造りは楽しい?」

「うん、楽しいよ。
でも、まだ頭の中で考えた通りにはちっとも作れない。
本格的に始めてから人形造りの難しさがわかって来たよ。
でも、僕、頑張るよ。」

「そうね、あなたの家は代々人形師ですもの。
あなたにもその才能が受け継がれてる筈よ。
あなたになら、きっと素晴らしい人形が造り出せるわ。」

丘の上に並んで腰掛け、二人は穏やかに話を交わす。




「……ねぇ、コハク……
僕がどうして人形師を目指したかわかる?」

「え…?
だってそれはお人形が好きだからでしょう?」

「違うよ。
もしも、君の身体が割れたり壊れたりした時に、直してあげたいから。
だから、僕は人形師を目指そうと思ったんだ。」

「……エルン……
ありがとう。そんなにも私のことを考えてくれたのね…」

「コハク…君は僕のことをどう思ってる?」

エルンは、深く俯き消え入りそうな声で尋ねた。



「どうって…どういうこと?」

「だから…僕のことを好きか嫌いか聞いてるんだよ!」

小首を傾げるコハクに、エルンは苛立ったように答えた。



「なんだ、そんなこと?
好きに決まってるじゃない。
あなたは私の名付け親だし、小さな時からずっと大切にしてくれたし…」

「そうじゃないって!
僕が言ってるのは…」

エルンは、コハクの身体を抱き締め、自分の唇を押し付けた。



「エルン…な、何を…!!」

コハクは驚き、エルンの身体を押し戻す。



「コハク!僕の気持ち…わかってよ!
それとも、僕のことが嫌いなの?」

「な…何を言ってるの?
エルン、しっかりして!私はただの人形なのよ?」

「年に一度は君は立派な人間だ。
僕は年に一度だって構わない…!
君のことを…本気で愛してるんだ!」

「馬鹿なことを言わないで!」

コハクは草原を駆け出した。
思いがけない告白に戸惑うコハクの瞳からは、涙が溢れ出た。
それは、コハクにとって初めての涙だった…


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