ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ







「こりゃあ美味い!
俺、こんな美味い料理食ったことがねぇよ!」

夕食の席で一緒になったのは、僕よりも明らかに年下と思われる、まだ若いドナルドという男だった。
僕と同じように霧に迷い、ここに辿りついた者らしい。
あまり素行の良さそうなタイプではなく、彼とはあまり親しく話す気にはなれなかった。
そうでなくとも、彼は食べたり飲んだりするのに夢中で、僕のことなど気にも停めていないようだった。
ドナルドは、まるで何日も食べていなかったような勢いで、次々とテーブルの上の料理を平らげていく。
もしかしたら、本当に何日もこのあたりを空腹でさ迷っていたのかもしれない。
そのくらい、ものすごい食べ方だったのだから。



気になるのはジェーン達のことだった。
僕が急にいなくなったことできっと心配しているだろう。
まさかとは思うけど、ジェーン達もどこかに連れ去られているなんてこともあるかもしれない。
心配で一刻も早くここを出ていきたい気持ちにかられたが、外の霧は酷く、今、出て行ったら今度はこの屋敷にさえ戻って来られないかもしれないと男に言われた。
確かにその通りだ…
見知らぬ場所では危険な行動は慎んだ方が懸命だ。
うかつに沼かなにかに足を踏み入れてしまったら、命を落としかねないのだから。
霧は永遠に続くわけではない。
霧が晴れるまで、あとしばらくの辛抱だ。

そう自分に言い聞かせ、僕は寝酒を飲んで眠りに就いた。


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