ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ







「コハク、!おはよう
昨日は楽しかったね〜!
今日もまた遊びに行こうよ!」

しかし、その言葉にコハクが答えることはなかった。
次の日も、またその次の日も、エルンは懸命にコハクに話し掛けたが、コハクがそれに答えることはなかった。
もしかしたら、あれは夢の出来事だったのかもしれない…
いつしかエルンもそう考えるようになったある時、再び、コハクは動き出した。



「エルン!今日もまた草原に行きましょう!」

「コハク!
……いや…これは夢なんだ…
コハクは人形なんだから、動く筈なんてないんだ…」

エルンは、両手で顔を覆い、何度も頭を振った。



「そうじゃないの…」

エルンの前に跪き、コハクは彼の両手を顔から引き離した。



「見て、エルン!
これは夢なんかじゃんくて、本当のことよ。
……でも、私が人間でいられるのは年に一度だけ…
あなたが私に名前をくれたこの日だけなの。
わかる…?」

「年に一度だけ……」

コハクは黙って頷いた。



「どうして?どうして一日だけなの?
どうしてずっと人間でいてくれないの?」

「そうね……私も出来る事ならずっと人間でいたいけど…
でも、それが神様との約束だから。」

「どうして?どうして、神様はそんな意地悪をするの?
一日だけなんて寂しいよ!」

エルンの木の葉色の瞳から、大粒の涙が零れ落ちた。



「……でも、エルン……
全然ないのと一日だけでもあるのとだったら…やっぱりあった方が良いと思わない?」

そう言いながら、コハクはエルンの涙を指で拭う。



「私は…一日でもあった方が良い…
だから……今日は楽しく遊びましょう!
そんな顔しないでよ…私まで悲しくなっちゃうわ。」

「……僕も…あった方が良いよ……でも……」

「さぁ、行くわよ、エルン!
私を捕まえてごらんなさい!」

エルンの父親に気付かれないように…だけど早足でコハクは外へ飛び出した。
エルンもその後を追う。
昨年よりは少し背も伸びたけど、エルンの足はまだそんなに早く走れない。
それが切なくもどかしく、エルンは泣き出したい気分を必死にこらえてコハクの後を追いかけた。


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