ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ シューラルフィール17


「……兄さん…もうすぐ死ぬことがわかっている人間は、嘘なんて言わないわ。
今のは私の本心よ。
……私ね、ずっと兄さんにお礼が言いたかったの…
でも、兄さんは私があらたまった話をしようとしても聞いてはくれなかった。
おまえは必ず治る…そう言うだけだった。
兄さんの気持ちは嬉しかったけど……私、もう長くは生きられないことが自分でもわかってた。
だからね……兄さんに、ありがとうって、言いたかったの……
感謝してることをはっきりと伝えておきたかったの……」

「……マリアン!」

リオは起きあがり、痩せ細ったマリアンの身体を力一杯抱き締めた。
いつもなら起きあがることさえ負担になるマリアンの体調を気遣い、そんなことはしたくても出来なかった。
久し振りの抱擁にリオの胸は熱く震えた。



「兄さん……本当にありがとう。
子供の頃から、兄さんにはずっとずっと苦労をかけてしまったわね。
それに、最後にはこんな素敵な時間を作ってくれて本当にありがとう!
何も恩返しが出来ないのが悔しいけど…ごめんね…兄さん…」

リオの腕の中で、マリアンも熱い涙を流した。



「馬鹿なことを言うんじゃないよ、僕は何も出来なかったのに……
そんなことよりもおまえは悔やんでないのか?
苦労ばっかりして…やっと幸せになれると思った矢先に病気になって…
おまえはまだ18だ…これから先もっともっと幸せになれる筈だったのに…
悲しいだろう?
悔しいだろう?
無理しなくて良いんだ…
僕になんでもぶつけておくれ!」

「そうね……残念なことはいっぱいある…やりたかったこと…まだまだいっぱいあった。
でもね、どんなに長く生きた人でもそうなのかもしれないわ。
満足しきって逝ける人なんて、きっとほんのわずかよ。
……私、自分の人生に納得したわけではないけど…でも、とても満足してるのよ。
私は、母さんや父さんに、そして兄さんからこんなに愛され大切にしてもらったわ。
これ以上、幸せなことなんてきっとない。
だから、満足なの…強がりなんかじゃないわよ。
向こうには父さんや母さんがいるから、怖い事も何もない。
それにね、私が死んでも…私が兄さんの妹だってことに変わりはないのよ。
見えなくなるのは寂しいことだけど、これからもずっと私は兄さんの傍にいるから……それだけは信じて……」

「マリアン……
おまえ、良い子過ぎるよ……」

二人は強く抱きあいながら、お互いの身体の温もりを感じていた。
別れが来ても、その温もりをずっと忘れないよう、しっかりと記憶に刻みつけながら…


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