ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ シューラルフィール16


「兄さん、聞いて…!
私、ここへ来られたことをとても幸せに思ってたのよ!
……以前、話したことがあったわよね?
少しお金にゆとりが出来たら旅をしてみたいって…
私、あの町を出たことがなかった。
せいぜい隣町にしか行ったことがなかったじゃない。
もちろん、あの町は好きだったけど……でも、もっといろんな場所を見て回りたかったの。
病気になってから、その夢が叶うなんて、私、思ってもみなかったわ。」

マリアンは、少し無理をしているようにも感じられる程、明るい声でそう話した。



(そういえば……)

リオは、マリアンと話した旅の話を思い出していた。
ずっと南にある海沿いの観光地の話や、東の国にある古城の話…マリアンは誰から聞いたのか、そういう場所の話をしてはいつか一緒に旅をしたいと話していたことを……



「マリアン…これは旅なんてもんじゃない。
どこかで珍しいものを見たわけでもなけりゃ、その土地にしかないおいしいものを食べたわけでもない。
おまえは壊れかけた荷車に乗せられて、面白くもなんともない場所を移動しただけじゃないか。
こんなの旅行とは全然違う…!」

「そんなことないわ。
私は、あのまま家にいたら、きっと狭い窓から空の一部しか見ることはなかった。
でも、ここへ来ることになったおかげで、広い空が見られたわ。
風も感じられた…花の香りも…暑さや寒さも…
家の中では感じられなかったたくさんのものを感じられたのよ。
それに、いろんな人にも出会えて親切にしてもらったこともあったわ。
教会にも行けて、神父さんとも少しだけお話が出来た。
それらはすべて私の思い出になるの。
家にいたんじゃ、到底出来なかったたくさんの体験や記憶…それらがどれほど私の支えになってたか、兄さんはわからなかったの?」

「マリアン……本当なのか?
本当におまえは後悔してないのか?
僕に気を遣って、無理をしてるんじゃないのか?」

リオは驚いたような表情で振り向き、涙を拭いながらマリアンにその真意を改めて問いかけた。


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