ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ シューラルフィール14






「そんなに走っちゃ危ないぞ!」

「大丈夫よ!
今日はどんなに走ってもちっとも苦しくないもの!
あ、見て、兄さん!あんな所に花畑が!」

「マリアン、待ってくれよ!」



マリアンは花畑を目指し、さらに速度を増して駆け出した。
リオは、その後を少し遅れて走って行く…



「まぁ〜、なんて綺麗なのかしら…!」

マリアンは、足元に咲きほこる花を踏みつけないように気遣いながら、身をかがめ、小さな黄色い花に顔を近付ける。



「……良い香り……」

「マ、マリアン…おまえは本当に足が速いな。」

息を切らしたリオが、膝の上に手を着いて呼吸を整える。



「兄さんは小さい頃から走るのが苦手だったものね…」

マリアンはそう言って笑い、肩をすくめた。



「兄さん、あそこで少し休みましょう。」

マリアンは、花畑の真ん中に丸く拓けた場所を指差す。
そこまでの間には、大人がちょうど二人並んで歩ける程の小道が続いていた。



「本当に綺麗…
誰かが毎日手入れしてるのね…」

両側に広がる花の絨毯をながめながら、マリアンは幸せそうに目を細めた。



「……そうかもしれないね。」

楽しそうなマリアンとは裏腹に、リオの顔にはどこか寂しそうな影が差していた。



「マリアン、何か食べる?それとも、なにか飲む?」

花に囲まれた芝の上に二人は腰を降ろした。



「そうね。少し喉が乾いたわ。」

「あんなに走るからだよ。」

リオは、水筒を手渡し、マリアンはそれをうまそうに喉を鳴らして流しこんだ。



「あぁ、おいしい!」

マリアンは、水筒を置いて大きく両手を伸ばすと、そのままゆっくりと身体を倒す。



「マリアン、どうした?
疲れたのかい?」

「ううん、そうじゃないの。
こうすると、空が良く見えるから…早いわね。もう陽が暮れて来たわ。
……今日は本当に楽しかった。」

リオも、マリアンの傍で同じように横になり、翳り始めた高い空を見上げた。



「良かったな……」

「兄さん……私…今夜でお別れなのね?」

「えっ!?」

リオは驚いて声を上げ、マリアンの方に顔を向けた。
マリアンは、空を見上げたまま、おかしそうにくすりと笑う。


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