ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ シューラルフィール8


「その通りだよ。
最初は何がどうなったのか、まるでわけがわからなかった。
ただ、君に食べられるんだということは覚悟したよ。
でも、意外なことにそうはならなかった。
君は僕を助けてくれた…
僕は、ね、小鳥になったことが夢の中の出来事なのか、現実なのかがずっとわからなかったんだ。
眠ると僕は夢の中でダーニアスになっていた。
僕は、いつも大勢の人達を目の前にして歌ってるんだ。
皆が感動して、僕に大きな拍手を送ってくれる…とても気持ちの良い夢なんだ。
けど、それは小鳥が人間に憧れてそんな夢を見るのかとも考えた。
いろいろなことを毎日どれほど考えても結局なにもわからないんだ。
そのうち、何を考えていたのかさえ、よくわからなくなった。
だから、僕はもう考える事をやめたんだ。
僕が人間でも小鳥でも、今感じてる事が夢でも現実でも、そんなことはどうだって構わない。
そう思ったら、なんとなく心が軽くなった。
リオと旅するようになってからは毎日がとっても楽しかったよ。
沼地にいる時よりもずっとたくさんの人に会えたし、いろんな風景を見ることが出来たから。
歌いたくなったら歌を歌う…
そう出来ることは幸せだったけど、君達と話を出来ないことはやはりどこか寂しかった。
歌だけでは伝えられないことがもどかしかったよ。
寂しくなると僕は眠った。
眠ると、僕はダーニアスに戻り、言葉を使って好きな歌を思いっきり歌えるからね…」

ダーニアスの長い独白に、今度はラルフも口を挟む事はなかった。
遠くを見つめるように視線を泳がせるダーニアスの表情は、憂いを帯びているようでもあり、楽しかった記憶を語っているようにも見えた。
彼の話す内容と同じく、夢とも現実ともつかない奇妙な感覚を感じ、リオは小さな溜め息を吐いた。



「ごめんなさい!ダーニアス…
私…なんと言ってお詫びをすれば良いのか…」

突然、ダーニアスの傍へ歩み寄ると、堰を切ったように嗚咽を始めたシューラルフィールに、全員の視線が集中する。


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