ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ シューラルフィール6


「では、ダーニアスの復活を祝して…かんぱーい!」

エルマーの音頭で、四人はグラスを掲げた。



「……このワインを久し振りに口にした時、僕は人間に戻れて本当に良かったと実感しましたよ。」

グラスのワインを一気に飲み干したダーニアスは、俯き機嫌良さそうに微笑んだ。



「ダーニアス、それで、小鳥になったいきさつはどうなんだ…?」

「あぁ…そうだったね。
改めて聞かれると話しにくいな……そんなたいしたことじゃないんだ。
今までどこに行っても聴きにきてくれてたフィーが突然来なくなった。
何かあったんだろうかと気になってた所、フィーが僕のためにとんでもない魔法を創り出そうとしていることを耳にした。
僕は、そんなものに興味はない。
そんなことよりも、僕はフィーに歌を聴いてほしかった…
ある日、立ち寄った町の近くにフィーの沼地があることを知った僕は、そのことをフィーに伝えるために沼地に行ったんだ。」

「そうだったの…」

シューラルフィールは、聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟き、俯いた。

ダーニアスの語る言葉は、その声のせいなのかどこか歌のようにも聞こえ、なによりもその時のダーニアスの状況がすんなりと頭に浮かぶことに、リオは不思議な感覚を覚えていた。



「そして、そこで沼に落ちた…だな?」

ラルフの挟んだ言葉に、ダーニアスはゆっくりと頷いた。



「その通りだよ。
僕はその時、少し酔っててね。
町の人達が歓迎して宴を設けてくれたんだ。
そんな中、僕はそっとその場を抜け出して沼地にやって来た。
空にはとても美しい青い月が顔を出していた。
つい見とれているうちに、僕はうっかりと沼に落ちた。
僕は泳げないんだけど、泥酔してたって程じゃなかったから、多分上がることは出来たと思う。
でもね……その時、ふと、思ったんだ。
このまま、動く事をやめたら、僕はどうなってしまうんだろう……ってね。
死の世界が頭に浮かんだ。
僕は、死についての歌も歌ってる…だけど、僕は本当の死を知ってるわけじゃない。
誰かの臨終に立ち会うことはあっても、自分の死を知ってるわけじゃない。
だから…動くのをやめた…」

「……ったく……詩人って奴は、ろくなことは考えないんだな…」

ラルフが呆れたように首を振った。


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