ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
襲い来るもの1






「……それにしても、良い気なもんだなぁ…」

ベッドの中で、すやすやと眠るアルルをみつめながら、カルフは溜め息混じりに呟いた。



森を抜け、しばらく歩くと幸運なことにすぐに町がみつかった。
その間にもアルルは一度も目を覚ますことはなく、ぐっすりと眠りこけていた。 
彼女を寝かす段になって、ようやくカルフは彼女がエルフであることに気付いたが、最近起こった信じられない出来事に比べると、カルフにはそんなことはどうでも良いことのようの感じられた。



「仕方ありません。
天使様はあんな大きな魔力を使われたのですから…」

いや、違う。
こいつがこんなに爆睡しているのは、大量に飲んだ酒のせいだ…
純粋なクラウドの顔を見ていると、とてもそんなことは言ってはいけない気持ちにかられ、喉まで出かかったそんな言葉を、カルフは懸命に堪えた。



(……って、こんなに酒臭いのに、どうして気付かないんだ?)

小首を傾げ、カルフはクラウドを上目遣いに盗み見る。



「そういえば、天使様…」

不意にぶつかった視線に、カルフは慌てて目を逸らした。



「な、なんですか?
あ…僕のことを天使と呼ぶのはやめて下さい。」

「申し訳ありません。
では…カルフ様。
……ここは一体どこなのですか?」

「えっ!?
そ、そんなこと……
ぼ、僕達は、天界から降りて来たばかりですから、この世界のことはちょっと…」



(……僕って……)

都合が悪くなるや否や、天使のふりをしてしまった自分自身に、カルフは軽い失望を感じて俯いた。



「そうですね。
それはごもっとも。
先程、宿のご主人と少し話をしたのですが、ご主人は私の住む町のことはまるでご存知ないようでしたし、このプリーガーという町については、私も名前すら聞いたこともないのです。
よほど、遠くに飛ばされたのでしょうか…」

「あ…あの、今、飛ばされたとおっしゃいましたが…
つまり…僕達は、アルルの魔法によって神殿からどこかへ転移された…と、そういうことですか?」

「……何を今更……
はっ!……もしや…これは想定外の出来事だったということなのですか?」

「えっ!?……あ、あぁ、まぁ……」

答えに困ったカルフは、言葉を濁しながら頭をかいた。


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