ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ ジョン33


アンドリューは、目の前のラルフから視線を逸らしてそっと俯き、小さな声で話し始めた。



「俺…本当によくわかったんだ。
嘘ばかり吐いてたら、誰のことも信じられなくなって、そして真実にも気付かなくなるっていうおまえの言葉…
本当だったよ。
俺は、とても大切なことを、ついさっきまで知らずにいたんだ…本当に馬鹿だった…」

「……ま、馬鹿だったってことに気付いたんならそれで良いんじゃないか?
結局、おまえは弱かったんだ。
嘘を吐くのはな、自分が弱いからなんだ。
だが、幼いおまえが強い者に対抗するには、嘘しか武器がなかったのかもしれないな。
嘘で鎧を作り、壁を築き、その中で隠れてたんだな。
そこしか安心出来る場所がなかったんだろう…
それは仕方のないことだったのかもしれない。
だけど、ずっとそのままじゃいけないな。
考えてもみろ。
おまえは、十七の時から何年もかかって借金を返しただけじゃなく、畑まで手に入れた。
これはすごいことだぞ。
借金を放っぽって逃げることも出来たのに、おまえはそうはせず、歯を食いしばってそれをやり遂げたんだぜ。
おまえはもう弱虫の子供じゃない。
嘘って武器を持たなくても、十分に生きていける強さを身に付けてるんだ。
だから、もうおまえには嘘は必要ない…わかるよな?」

「ね…猫のくせに……」

アンドリューはさらに深く俯き、伸ばした片手でラルフの前足をそっと掴む。



「……ありがとう。
おまえの言う通りだ。
良かったよ…俺…ウォルフボーラスやおまえに会えて、感謝してる。
本当にありがとう……」

「おまえが掴むのは俺の手じゃなくて、こっちだろ?」

ラルフの視線を受け、スージーはそっと手を伸ばした。



「ジョン…あの…」

「スージー…」

アンドリューはスージーの手を強く握り、すっくと顔を上げた。



「スージー、今まで言えなかったけど…
こんな俺を見捨てずにいてくれてありがとう。
……良かったら……良かったら、これからも俺の傍にいてくれ。」

「……え?」

「畑を売って、この先の町で小さくても良いから家を借りて二人で住もう。
俺…一生懸命に働くよ。」

「ええっっ!」

スージーは驚きの声を上げ、真っ赤になった頬に両手を添える。



「アンドリュー、いくらなんでも急過ぎじゃないのか?」

「え?……そ、そうか?
ご、ごめん、俺、こういうこと、慣れてなくて…あの…その…思ったことをそのまんま…」

焦ってしどろもどろに呟くアンドリューをみつめながら、スージーは幸せそうな笑みを浮かべた。


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