ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ ジョン26


しばらく呆然と扉の方をみつめていたアンドリューが、突然肩をすくめくすくすと忍び笑いを漏らした。



「どうしたんだ?」

その言葉にアンドリューはラルフをみつめ、にっこりと微笑んだ。
それは、今までアンドリューが見せたことのないような清清しい笑顔だった。



「……まるで、夢みたいな出来事だったな。
でも、おまえは現実にここにいて、こうして俺としゃべってる…
なんだか、とてもおかしな気分だ。」

ベッドの上からラルフをみつめるその視線もその声も、どこか優しい。



「そりゃあそうだな。
あんなこと、めったにあることじゃないもんな。
とにかく…まずは顔を洗って来たらどうなんだ?
ずいぶん、酷い顔してるぜ。」

「だろうな…
あぁぁ…こんなに泣いたり喚いたりしたのは何年ぶりだろう…
俺……不思議と、今、さっぱりした気分なんだ。
それに……ものすごく腹が減った。」

そう言いながら、アンドリューは両手で腹を押さえた。



「あ……おまえにも何かやるからな。
……悪かったな。
おまえにも冷たくして…
俺…本当は動物は嫌いじゃないんだ。
……でも、えさ代をケチって、飼うことはしなかった…
なんでもかんでも切り詰めて……我慢して我慢して……いつの間にか守銭奴になっていた。
俺はゆとりってもんをなくしちまってたんだな…」

ベッドの横に両足を下ろしたアンドリューが、独り言のように呟いた。



「それが正しかったかどうかは別として…
おまえはよく頑張ったと思うぜ。
おふくろさんが亡くなった時はまだ十七かそこらだったんだろ?
そんな時から本当によく頑張ったよな。たいしたもんだぜ。
結局、壷を弁償するのには何年かかったんだ?」

「なんだよ…猫の癖に生意気なこと言いやがって。
……かれこれ七年だったかな。
その時にはわからなかった。
毎日毎日、ただ働いて寝て起きてまた働いて…
何かを考える時間もなかった。
その日が何日だとか、寒いとか暑いとかそんなことも考えてなかったような気がするよ。
気がついたら、七年が過ぎてたって……そんな感じだったかな。
……あ、あの小鳥にも何かやらないとな。
ちょっと待ってなよ。」

レヴィを見てそう言うと、アンドリューはようやくベッドから立ちあがった。


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