ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ ジョン13






「彼にはそんなことが……」

町までは、リオが考えていたよりもずっと遠かった。
道程が長い分、リオは、アンドリューについての情報をかなり詳細に聞く事が出来た。
ラルフの推測した通り、アンドリューは貴族などではなかった。
彼は貧しい家の生まれで、彼がまだ幼い頃に父親が事件を起こし、そのことからアンドリュー一家は町の人からも冷たい仕打ちを受けていたのだということだった。
身体の弱い母親が女手一つで、アンドリューと妹を育てあげ、それは貧しい暮らしをして来たのだという。
アンドリューが十五、六の頃、一家はスージーの住む隣町に引っ越した。
そこで母親はある屋敷の下働きとして働き、アンドリューは港で働き始めた。
新しい町での暮らしにも慣れ、ようやく三人の暮らしが上向きになっていくかと思われた頃、母親が屋敷の高価な壷を割ってしまい、大きな借金を抱えてしまった。
そのショックからなのか、母親は病に倒れ、一年後に呆気なく旅立った。
アンドリューに残されたのは、妹と多額の借金だけだった。



「つくづく運の悪い人なんですよ、ジョンは…
彼のお母さんが亡くなってしばらくした頃、エイミーがいなくなったんです。」

「……エイミーっていうのは?」

「あ……妹です。
彼は、『あいつがいると邪魔だから養女にやった』と言いました。」

「そんな酷い……!」

声を荒げたリオに向かって、スージーは首を振る。



「……彼は、エイミーのことをとても大切にしていました。
あれは…きっと彼の優しさだと思うんです。
借金を返すため、まだまだ苦しい生活が続くってことを考えて…それで、ジョンはエイミーをお金持ちの家に養子に出したんじゃないかって…
私はそう思ってるんです。」

「そういうことですか……」

「それからの彼は、以前にも増して一生懸命働きました。
そして何年もかかって、彼はそれをすっかり返したのです。
その間に、エイミーが何度かお屋敷を抜け出してジョンの所へ来ていました。
エイミーは、ジョンだけが苦労してることをとても気に病んでいるようでした。
借金を返し終えたある日、ジョンが私の元へやって来ました。
そして、自分はこれから町を出て行くと言ったのです。
もしも、エイミーが訪ねて来たら、自分は大きな町で良い仕事がみつかって、そこで働く事になったからもうこれからは何の心配もいらないと伝えて欲しいと言われました。
もちろんそんなことは嘘です。」


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