ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
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「ベルガー、私、なんだか眠くなってきちゃったわ。
少しお昼寝するわね。」

そう言うとキャロラインは大きく伸びをして、静かに目を閉じた。



(相変わらず、自由な奴だな…)

ベルガーは心の中で微笑むと、流れて形の崩れていく雲をみつめた。



(森の守護者としての使命を捨てて森を出たばかりか、おまえを連れだし、その上、時の魔法まで持ち出してしまった私を彼らは絶対に許すことはないだろうな。
……そんなことをして私は一体何を手に入れたのだろう…
キャロルは、私が、ギディオンということを知ることはない…それどころかギディオンという者の存在さえ知らぬ。
時の魔法で一瞬にしてすべては彼女が魔の森へ足を踏み入れる前の状態に戻った。
そう…あの森での暮らした日々はすべてなかったことになってしまったのだから。
私が認めた書簡を読んで彼らはさぞ驚いたことだろうな。
彼女を人間の世界へ戻すだけなら、問題はなかったのかもしれない。
時の魔法を発動したことだけを黙っていれば、私はあのまま森で暮らすことも出来た。
だが…私にはそうは出来なかった。
どうしても彼女の傍にいたかった。
彼女の目には私はドラゴンとしか映らないというのに…
そんな私を愛してもらえる日は一生来ない事もわかっているというのに…
……お笑いだな。
好きな女のために私がこんなことまで出来るとは…)

ギディオンは、心の中で自嘲した。



(これが愛の力というものなのか…)

無邪気な顔をして眠るキャロラインの顔を見ながら、ギディオンは小さな翼を空に向かって羽ばたかせた。



〜fin〜


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