ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
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「……全く、おまえというやつは。
何度、同じことを言ったらわかるんだ!
そういう持ち方をするから怪我をするんだ!」

口ではきついことを言いながらも、切れた指を手当てするギディオンの態度はとても優しいものだった。



「……だって、あのかぼちゃ、すごく固かったんだもの。」

「そういうものは私に任せれば良いだろう。」

「あんなもの、私にだって切れるわ!」

「切ったのは自分の指ではないか。
この程度の怪我ですんだから良かったものの、下手すりゃ指をなくす所だったんだぞ!
これからは、無理せず私に言うんだぞ。」

「ギディオン…ありがとう…」



あの日以来、キャロラインは、度々、ギディオンの家を訪ねるようになった。
それは、彼に料理を習うためだった。
最初は、週に一度程度だったものが、しばらくすると三日に一度くらいになり、それが今ではほぼ毎日のように彼の家を訪問するようになっていた。
キャロラインの料理の腕はそれほど劇的に上達したわけではなかったが、それでも、最初の頃とは比べるものにならないほどうまくなっていた。
ギディオンのレベルにはまだ程遠かったが、少なくともお腹を壊すようなものは作らないようになっていたし、まずくもなくなっていた。
そして、なによりも一番大きな変化は、ギディオンとキャロラインのお互いに対する感情だった。



「ギディオン…
私、ここに来て良かった。
ここに来なかったらきっと私は本気で誰かを愛することなんてなかったと思うの。
両親の決めた人と結婚して、それなりに幸せに暮らしたかもしれないけど、きっとこんな熱い気持ちは感じられなかったと思う。」

「キャロル……」

「ギディオン、そんな辛そうな顔しないで…
……わかってる。
どんなに愛していてもあなたと私が結ばれることがないことは。
あなたは魔物で私は人間…その上、あなたはこの森の守護者なのだから…
でも、この先、いつかあなたが他の誰かと家庭をもつことがあっても…あなたを愛し続けることは私にも許されるわよね?
私、絶対におかしなことなんてしないわ!
相手の方を憎んだりもしない。
ここにも二度と来ない…
ただ、遠くからあなたをみつめるだけで良いの…
それだけなら…許してもらえるわよね?」

キャロラインは、ギディオンの逞しい胸に身体を預け、独り言のように呟いた。


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