ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ ジョン2


「……正直言って、僕にもよくわからないんだ。」

「え……?」

「……そりゃあいやだよ。
僕を見て腰を抜かされたり、悲鳴を上げられるのは…
でもね、ラルフ…人間の順応性ってたいしたもんだよ。
そんなことにも、いつの間にか慣れるようになって来た。
傷付かなくなって来たんだよ。
ただ、相手に悪いなって思うだけのこと。
それに、知らない町を旅することはけっこう楽しいしね。」

「だけど、おまえはその変化のせいで故郷にも帰れないばかりか、一所にずっといることも出来ない…」

「うん…だけど……」

リオは、咳払いを一つすると、いつもより低い声で話し始めた。



「考えてもみろよ。
世の中には、その場所を離れたくて仕方ないのに、いろんな事情からその場所を離れられない奴だってたくさんいるんだぜ。
そういう奴は、自由気ままに旅を出来るおまえのことをきっと羨ましく思うはずさ。
おまえは、路銀の心配だってしなくて良いんだからな。」

話し終えたリオは、ラルフに片目を瞑ってみせた。



「……今のはもしかして俺の物真似のつもりか?
へったくそだなぁ…」

「そう?僕はけっこう似てたと思うんだけどな…」

リオは、少し照れたような笑みを浮かべて俯いた。



「全然、似てないぞ!
……でも、ま、確かに、話の内容は俺の言いそうなことではあったけどな。
それで、リオ……本当の所、おまえはどう思ってるんだ?」

「……だから、偽ラルフが言った通り…
なのに、僕はシューラルフィールを探す事がやめられない。
本当にこのままで良いと思ってるのなら、探す必要なんてないはずなのに…おかしいよね。」

リオの言葉に、ラルフはいつのも笑顔を浮かべる。



「人間っていうのはそういうもんじゃないか。
頭で考えてることと、心で思ってることが必ずしも一致しない……そういうややこし〜い生き物なんだ、人間ってのはな。
あぁ、いやだ、いやだ。俺は本当に猫で良かったよ。
……そんなことより、リオ、今夜はどうするんだ?
町まで行くのか?」

「う〜ん……今からじゃ、町に着くのはだいぶ遅い時間になってしまうと思うんだ。
今夜はこのあたりで過ごして朝になったら出発しようか。」


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