ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
フレッド9


「……それで、思い出したのはそれだけか?」

二人の笑いの発作がようやくおさまりかけた時、ラルフの不機嫌な声が響いた。



「あ…あぁ…すまん、すまん。
そのことは、俺は端から信じちゃいなかったから聞かなかったんだが…
元々は、俺の知り合いのサーシャから聞いた話なんだ。
あいつは、なんていうのか…噂話が好きでな。
役に立つ話かどうかはわからないが、いろんな話を知ってることは間違いない。
シューラルフィールのことについても、何か知ってることがあるかもしれないぞ。
一度、サーシャの所を訪ねてみたらどうだ?」

フレッドは話しながら、笑いすぎて流れ出た涙を指で拭う。



「ええ!ぜひ!
その方はどこにいらっしゃるんですか?」

リオはフレッドの話に身を乗り出した。



「ちょっと待ってくれ。
今、地図を描くからな。
近くだから迷うこともないとは思うが、念のためだ。」



フレッドの話によると、サーシャはこの先の町のはずれに住んでいる若い魔法使いだそうだ。
社交的な性格で、人間とも魔法使いとも交流があり、どちらの世界の事もよく知っているという。



「なんていうか…ちょっと変わった奴なんだ。
魔法や薬の勉強もしないから、ほとんど人間と変わらない。
自由奔放な娘なんだ。」

僅かに目を細め、そう語るフレッドの顔はどこか嬉しそうなものだった。







「フレッドさん、いろいろお世話になりました。」

「そんなこと言われる程のことは何もしちゃいないさ。
こっちこそ、世話になったな。
シューラルフィールがみつかってあんたの呪いが解けることを祈ってるよ。」

フレッドはリオの片手を強く握った。



「フレッド、薬をありがとう。」

「あぁ…なくなったらまたいつでも来なよ。
いや…なくならなくとも、半端な魔法使いのことを思い出したら、いつでも遊びに来てくれよ。」

フレッドは、身をかがめ、黒猫のビロードのような毛並みを撫でつける。



「フレッド…
魔法使いでも人間でもないってことは…きっと、魔法使いでも人間でもあるってことだって思うんだ。
それって、考えようによっちゃすごい事だと思わないか?
人間の言葉をしゃべれる猫と似たようなもんだな。」

ラルフはそういうと、いつもの笑顔を浮かべて見せた。
一瞬、戸惑ったような表情を浮かべていたフレッドの顔にもすぐにその笑顔が感染する。



「そいつは光栄だな。
ありがとうよ、ラルフ。」

二人のやりとりに、リオも穏やかに微笑んだ。


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