(す、すごい!)



こんなにステージが近いなんて思ってもみなかった。
これだったら、ちゃーちゃんの汗までしっかり見える!
僕は、ステージをみつめながら、感激を噛み締めていた。



やはり正解だった。
人気アイドルグループ、ミラクルくるりんのチケットは、なかなか取れない。
取れても、今まで良い席で見られた試しはない。
僕は、デビュー当時からミラクルくるりんのちゃーちゃんの大ファンで…
なんとか最前席で見てみたいと思ってたのだけど、まともな手段じゃ、そんなのとても無理な話だ。
何とか願いを叶える方法はないものかと僕は考え続け、ある時、不意にひらめいた!
それは、コンサートの警備員だ。
僕は、ミラクルくるりんの警備員に応募して、運良くその日警備をすることになった。
僕が担当するのは、やや左の最前列だ。
ちゃーちゃんがばっちり見える最高の場所だ。



真夏の野外…しかも、今年は並外れた酷暑だ。
体温超えの気温がもう何日も続いている。
でも、そんなこと、気にもならない!
僕の心の中は空でギラギラと輝く太陽よりも熱い!
だって、こんなに近くでちゃーちゃんが見られるのだから。



リハーサルが済み、僕らは定位置に就き、客が入場して来た。
みんなの熱気がひしひしと伝わって来る。
前の方にいるのは、体格の良い男達ばかりだ。
あんなのを押し戻さなくてはならないなんて、こりゃあなかなか大変そうだ。



「暑さになんか負けないよ〜!」



SEが流れ、ぢゅん子のアニメ声があがると、それに応える野太い声と共に観客のテンションは一気にマックスに達した。
男たちがどんどん前に押し寄せて来る。
ただでさえ暑いのに、むせかえるような熱気と汗のにおいがそれに追い打ちをかける。
僕は、全力で男たちを押し返した。
本当はみんなと一緒に、ミラクルくるりんの曲に合わせて踊りたいところだけど、今日の僕は警備員…
そんなことをしていたらつまみ出されてしまう。
だから、そんな気持ちをぐっと抑えて、ひたすら押し戻し続けた。
体が熱くて滝のような汗が止まらない!
今、この場所は100℃を超えてるんじゃないかなんて馬鹿なことを考えながら、僕はミラクルくるりんのコンサートに酔いしれた。


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