第11章…帰趨1
「ノワール!ノワール!
どこにいるの?
ブルーさ〜ん!!」
パメラが家に戻った時、二人の姿はどこにもなかった。
ブルーが訪ねて来た時点で、パメラはいやな予感を感じていた。
彼がノワールをどこかへ連れていってしまうのではないか…と…
しかし、それを彼に聞く事は恐ろしくて出来なかったのだ。
自分は、ノワールに何も求めない…求められる立場ではない…そう考えてきたはずなのに、彼と一緒に暮らすうちに、その気持ちは揺らぎ始めていた。
「愛してる」
彼が言ってくれるその言葉をそのまま信じたいと思った。
愛してほしいと思っている自分がいた。
しかし、ノワールは自分のことをブルーに紹介する時、「妻」だとは言ってはくれなかった。
そこにはノワールの複雑な想いがあったのだが、パメラがそのことを知る由もない。
やはり自分は愛されてはいなかったのだ…
そう思うと、パメラの瞳から涙がこぼれた。
もう彼のことはすっぱり諦めよう…忘れよう…
そう考えてはいたが、ノワールが突然姿を消してしまうとは思っていなかった。
いくら自分のことを本気で愛してはいなかったとしても、あのノワールが何も言わずに出ていくとはどうしても思えなかったのだ。
テーブルの上にあったお金と懐中時計やネックレスはブルーが置いていったものだとすぐにわかった。
ノワールがそんなものを持っていないことはわかっていたから。
(もしかしたら、ノワールはブルーさんに無理にどこかに連れていかれたのでは…?!)
金と品物はその償いのようなもののつもりだったのではないかとパメラは考えた。
*
それからもパメラは何日も二人を探して回ったが、やはり二人はみつからなかった。
港に行ってみると、いつもの物売りの男がブルーを探していた。
話を聞いてみた所、ブルーをこの島に連れてきたのはこの男だということがわかった。
と、いうことは、二人はまだ島を出ていないのだとも考えられる。
物売りの男はブルーの父親にこのことを知らせてくると言って島を離れた。
それからもパメラは島の人々にも声をかけ二人の行方を懸命に探したが、やはり二人はみつからないどころか手がかりとなるようなものすら何一つみつからない。
島の中は隈なく探した。
これだけ探してみつからないということは、なんらかの手段を使ってこの島を出たとしか思えなかった。
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