第9章…side ノワール2


「ノワール…!
私は以前、言ったはずだ!
裏切ったら許さないと…!
……だが、このまま素直に私と戻るというのなら…今回だけは水に流す…
すべて、なかったことにしてやろう…
わかっているのだ、ノワール…
何かやむにやまれぬ事情があったのだな…?
私と離れていて寂しかったのだろう?
それで、そんな薄汚い女と…
仕方なかったんだな。
わかっている。
私はおまえを許してやる…さぁ、戻ろう…」

ジェロームが唇と舌を私の首筋に這わせる。
彼の熱い吐息を感じながら、私は叫んだ。



「……いやだ!」

その声と同時に彼の動きがぴたりと止まった。



「……ノワール…今、なんと言った……?」

「ジェローム…私は帰らない…
私は……パメラを愛している……もうどうしようもないんだ…
私のことならあなたの気の済むようにしてくれて構わない。
だが、どうかパメラには手を出さないでくれ!
そして、もう、私のことは忘れてくれ!」

「……ノワール…おまえ…自分が何を言っているかわかっているのか…?
本気で…私よりも、こんな薄汚い田舎女を選ぶと言うのか…」

ジェロームは顔の色を失い、拳を固く握りしめて、身体を震わせる。
彼が、今、どれほど大きな怒りを感じているのか、私には痛い程よくわかった。


しかし、それでも、私は嘘を吐くことは出来なかった。
私は彼の質問にただ黙ってうなずいた。

一瞬の間を置いて、ジェロームの堅いステッキが私を激しく打ち据えた。
パメラの甲高い悲鳴が上がる。



「ば、馬鹿な…そんなこと許さない!絶対に許さない!!」

ジェロームは狂ったように私を叩き続けた。



「やめてください!!」

「ノワールに近付くな!
一体どんな手を使ってノワールを誘惑したんだ!
おまえのせいで…おまえのせいで、ノワールは…!!」

ジェロームは、腰のベルトから鋭いダガーを引き抜いた。
彼は憎しみのこもった瞳でパメラを見据え、少しも躊躇うことなくパメラの心臓めがけてダガーを振り降ろした。



「やめろ、ジェローム!」

私はジェロームの身体を突き、幸いなことにダガーは狙いを外したが、その鋭い刃はパメラの足に深々と突き刺さっていた。
ジェロームはそれを引き抜き、なおも彼女に襲いかかろうとした。



「パメラ!」

私は咄嗟に彼女の上に覆い被さった。



「ノワール!…そ、それほどまでに、こんな女を…」

怒りに狂ったジェロームのダガーが私の背中に振り下ろされる。



「やめて〜〜〜!」

パメラの絶叫が響く中、ダガーは執拗に私の身体に突き立てられた。
声を発することさえ出来ない激痛に、私は顔を歪ませ、じっと耐えた。
やがて、火のついたような痛みの感覚がそのうちだんだん遠のいて……



私は、もう駄目かもしれない…



そう思った時、ジェロームの身体が私の上にどさりと崩れ落ちてくるのを感じた…


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