第8章…side ブルー1


「じゃ、そろそろでかけようか。」

「そうですね。」



私は相変わらず穏やかな日々を過ごしていた。

少し前から私は店の奥の部屋を引き払い、セドリックの屋敷に住まわせてもらっている。

彼と生活を共にし、夕方近くになると、私達は毎日一緒にバーへ向かう。



先日、セドリックから養子になってもらえないかと持ちかけられた。

私と彼の関係はとてもうまくいっていたし、私がごく普通の人間であったなら断る理由はなかったかもしれない。

しかし、私は人間ではない…
いずれは、天界へ帰る身なのだ。

とはいえ、いまだにノワールの手掛りは何一つみつかってはいない。
こんなにも会えないということは、もしかしたら、私達は違う時代にいるのではないかと最近思い始めてきた。

もしも、そうなら、ノワールに会えることはこの先もないかもしれない…
会えなければ、天界に戻れることも出来ない…

私は年を取らないのだからずっとは無理かもしれないが、しばらくの間なら、彼の言う通りにしてやることは出来る。

彼のためというだけではなく、そうすれば私自身も今よりもなお穏やかで安らかな日々を過ごしていけるのかもしれない…

しかし、いずれは年を取らない私にセドリックは不信感を抱くだろうから、そうなれば彼の元を去らねばならない…
そんなことになるくらいなら、やはり養子になることを承諾しない方が良いようにも思えてくる…

私は心の奥でそんなことを考えては気持ちが揺れ動き、とにかくすぐに決断することは出来ず、双子の兄弟のことが解決するまで待ってほしいと彼に頼んだ。

彼はそんな私の気持ちを察してくれたのか「急ぐ事はない、じっくり考えてくれたら良い」と言ってくれた。


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