第7章…side ノワール18
私は彼女の父親が使っていた古い小舟を修理し、魚を獲ることを思い付いた。
彼女はこのままで幸せだと言ったが、今の状況はあまりにも酷過ぎる。
もう少しまともな所に住まい、彼女に素敵な服を着せ、うまいものを食べさせてやりたかったのだ。
私は自分の心の変化を興味深く感じていた。
愛する者のために…と考えると、自分のこと以上に頑張れるものだということを実感していた。
小舟の修理も思った程簡単なことではなかった。
島の男に教えを乞い、どうにか直すことは出来たが、その後も学ぶ事はたくさんあった。
私は魚を獲ったこともなかったのだから。
いや、それだけではないく、もともと汗水をたらして働くこと自体、したことがなかったこの私が、小さな小舟に揺られながら魚を釣り、そしてそれを売りに行く…
こんなことが出来るようになったのもすべてパメラのおかげなのだ。
以前の私のことを知る者が今の私を見たらどんな風に思うだろうか?
きっと、今のこの姿を見たら私だということに気付きさえしないだろう…
魚で得た収入等、微々たるものではあったが、私は自分で働いて金を得るということが出来るようになったことに男としての自信のようなものを感じていた。
いつか、きっとこの島を出て、パメラに楽な暮らしをさせてやる!
その希望と彼女の笑顔が一日の疲れを吹き飛ばしてくれる。
私は人間の世界に来て、やっと心の底から幸せだと思える日々を手に入れたのだ!
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