第7章…side ノワール16


「私…両親が死んでからはずっと一人で…
誰かと話をすることさえ、ほとんどありませんでした。
あなたは、私と一緒に暮らして、毎日私と話をして下さいました。
よその世界のことをたくさん教えて下さいました。
それが私にとってどれほど嬉しかったことか…きっとあなたにはおわかりにならないと思います。
あなたのおかげで私はたとえようのない程の幸せをいただいたのです。
ですから、あなたに恩返しをしなくてはと考えてはいたのですが、残念ながら私には何も出来ることがなくて…」

「馬鹿なことを言うもんじゃない!
君は私のためにさんざん苦労をしてくれたじゃないか。
私の命を救ってくれたのも君だ。
恩返しをしなければいけないのは私の方なのに、私は君にあんな酷いことを…」

「そんなことありません!
私は少しでもあなたのお役に立てれば、それで幸せなんです。本当です!
あなたは私の手が届くような方ではない。
……そのことは十分わかっていたのです。
でも、私は……いつの間にかあなたのことを愛してしまいました…
ごめんなさい…!
私は、何も求めてはいません。
私のことなど考えて下さらなくて良いのです。
ただ、その気持ちだけは…あなたのことをお慕いすることだけをどうぞお許しいただけませんか…?」

彼女は涙を流しながら、そう告白した。



私は彼女になんと答えれば良いのかわからなかった。

パメラは私が今までに関わってきた者達とは明らかに違う。
何の欲望も持ってはおらず、私に対しても何の見返りも求めない…
ただ、私を愛することだけを許してくれと、この女は涙を流して懇願しているのだ…



こんな人間がいたことに私は大きな戸惑いを感じ、私は彼女に何も言う事が出来なくなってしまった…


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