第7章…side ノワール10
*
「気が付かれましたか!?」
私が目を開けると、目の前には見知らぬ女の顔があった。
ゆっくりとあたりを見回してみると、どこかはわからないが、粗末な小屋の中だということはわかった。
私はその中に寝かされている。
(なぜ、私はこんな所に…)
「大丈夫ですか?」
身体のあちこちがきりきりと痛んだ。
なんとなく気分も良くない…
「……ここは…?私は、どうしてこんな所へ…」
「あぁ、良かった!口がきけるのですね。
あなたは、三日前に浜辺に打ち上げられていたのです。
思い出せますか?」
「浜辺に…?」
(……そうだ!
私はあの時、船から落ちて…
そうか…そうだったのか…だが、私は助かったのだな!)
記憶を辿りながら、自分が助かったことに心の底から安堵した。
「あなたが助けて下さったのですか!
本当にありがとうございました。」
「いえ…ここにはお医者様がいないので、たいした手当ても出来ず…
なかなか目を覚まされないので心配していたのですが…本当に良かった…」
「そうだったのですか…
あ…私はノワールという者です。」
「ノワールさん……私はパメラです。」
パメラという女は、そう若くはなく、たいそう粗末な身なりをしていた。
聞いてみると、両親はすでに亡くなり、ここには一人で住んでいるということだった。
私は、ブルーのいる大陸に流されたと思いこんでいたのだが、そうではなかった。
私が流れ着いたのはその大陸から少し離れた小さな島だったのだ。
そのことには少し失望を感じたが、そう贅沢も言えない。
助かっただけでも感謝しなくては…
パメラは献身的に私に尽くしてくれた。
食べるものはろくなものではなかったが、きっとそれでも精一杯のことなのだろうと思った。
しばらくすると、私はなんとか身体を動かせるようになった。
初めて小屋の外に出た時に私の目に映ったものは、曇った空と海に続く浜辺…
そして小屋の前の狭い畑にわずかに実った貧弱な野菜…
私はパメラに付き添われながら、浜辺へ向かった。
彼方に大陸の影がうっすらと見える。
「パメラさん、ここから大陸へはどのくらいかかりますか?」
「けっこう遠いですよ。
船で四〜五日はかかると思います。」
「四〜五日ですか…でも、そのくらいならすぐではありませんか。
私はどうしても大陸に行かねばならないのですが、誰かに船を頼んでいただけないでしょうか?」
- 67 -
しおりを挟む
コメントする(0)
[*前] | [次#]
中編集トップ 章トップ