第7章…side ノワール8
「そうか…
ブルーに会えたら、このことはちゃんと伝えておく。
君も子供のために精一杯生きてくれ…」
私はクリスに口先だけの言葉を投げかけ、酒場を後にした。
ブルーもけっこう苦労していたのだと思うと、苦々しい笑いが込み上げてきた。
しかし、彼が天界へ戻る事を諦めて人間の女と所帯を持とうとしていたのではないということがわかり、私はほっと胸をなでおろすことが出来た。
*
次の朝、私はクリスに聞いた町の港へ行き、そこからブルーがこの先の港まで乗船したことを再確認した。
私と同じ顔だということと蒼い髪のおかげで、彼のことを覚えている者が多かった。
私はその次の日、船に乗り、ブルーが向かったであろう港へ向かった。
数日後着いたのは大きな港だ。
この港を最後に、ブルーの消息がつかめなかったとクリスは言っていた。
…と、いうことは、この町からまたすぐにどこかへ向かったと考えるのが道理だ。
この港から出ている船は相当な数がある。
これを一つ一つ探すのは、気の遠くなる作業だ…
運行表を見ながら、私は小さなため息を吐いた。
ここまで来たが、またジェロームの屋敷に戻りさらに過去へ戻るべきなのか…?
「あれ、あんた…」
不意に声をかけられ、私が顔をあげると男は怪訝な顔をしている。
「違ったかなぁ…?よく似てるんだがなぁ…」
「もしかして、蒼い髪の男のことを言っているのか?」
「あぁ、そうだ。
前に船で見掛けた人に似てるが、髪の色が違うなと…」
「それは、私の双子の兄弟だ!
教えてくれ!彼はどの船に乗ったんだ?」
「双子だったのか…!それでそんなにそっくりなんだな!
その人なら隣の大陸へ行ったはずだぜ。」
「隣の?
そんな行き先の船はどこにも書いてはいないぞ。」
「定期船は月に一便しかないから、そこには書いてないんだ。」
「本当か!
それでその定期船は、今度いつ出るんだ?」
「明日だよ。あんた本当にツイてるな。」
男の言う通りだ。私は本当にツイている。
今、この男に声をかけられなかったら、また無駄な時間を遣うことになっていただろう。
クリス達はきっとこの定期船の存在に気付かなかったのだ…
私は、次の朝、隣の大陸に向かう定期船に乗り込んだ。
今度こそ、きっとブルーに会える…!
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