第7章…side ノワール7


「……そうじゃないさ。
彼女はいつも部屋の灯りを全部消すように言った。
そして、俺が彼女を抱いている時に彼女が口にするのは俺ではなくブルーの名前だった…」

「……つまり、君はブルーの身代わりにされたということなのか…」

「……その通りさ…
馬鹿だと思うだろうが、それでも俺は彼女を抱けるのが嬉しかったんだ…
いくらレティシアがブルーのことを想っていても、彼女の身体を抱いているのは俺なんだ…
いつかきっと、彼女はブルーのことを諦めて俺のことを愛してくれる…!
彼女からの誘いは頻繁だったから、きっと知らず知らずの間に俺の方に気持ちが傾いてきてるんだ…と、そんな風に思ってたんだ。
ところが…」

「違ったのか?」

「彼女に子供が出来たと聞かされた…
そして、俺とのことは絶対に言うな!と釘を刺された。
もし、誰かに話したらお腹の赤ん坊と共に命を絶つと…
それだけじゃなかった。
彼女は、座長にありもしない嘘をついた。
ブルーに犯され子供が出来たと…な。
俺もレティシアに口裏をあわせ、ブルーは濡衣をきせられたまま、レティシアと結婚させられることになったんだ…」

「ずいぶんな話だな…ブルーは君達にはめられたんだな。
しかし、君はレティシアがブルーと結婚しても構わなかったのか?」

「そりゃあいやに決まってるだろ!
だが、赤ん坊は俺の子だ…
赤ん坊の顔を見れば、レティシアだって、そんな結婚が間違いだと気付いてくれるはずだ。
そしたらきっと俺の所に戻って来てくれる…そう思ったんだ…」



(……なんと愚かな男なのだろう……)



端から相手にもされていない…一欠片の愛情さえ持たれてはいないというのに、儚い夢を信じ続け、女の言いなりになっていたのか、この男は…

私はクリスに憐憫と軽蔑の入り混じった感情を抱いた。



「だから、ブルーは逃げ出したというわけか…」

「……そうなんだ。
だけど、そのせいでレティシアは…!
ブルーがいなくなってから、彼女は気が狂ったようになってブルーを探し続けた…
食べるものもろくに食べず、眠ることも出来ないようで、彼女は日に日に弱っていったんだ…
そして、二ヶ月も早くに子供を産み…幸い、赤ん坊は助かったが、レティシアは…
最後の最後まで、ブルーの名を呼んで…
畜生!!
こんなことになったのはあいつのせいだ!」



(…逆恨みも良いとこだ。
ブルーは被害者ではないか…)



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