第7章…side ノワール3


「町のことならわかりますが…
親しい方となると…おそらく、一座の方以外にはあまりご友人もいらっしゃらなかったのではないかと思います。
私はブルーさんがこちらの大陸に来られる前の事はほとんど知らないのですが、こちらに来られてからは一座の方以外と親しくされてるような様子は感じられませんでしたが…」

「では、一座の誰かと特に親しかったようなことはありませんか?」

「私も詳しいことはわかりませんが、確かクリスさんという若い男性とは仲が良かったようですよ。
それから、ブルーさんは踊り子のレティシアさんとご結婚されたはずですよ。
私が最後にお会いした頃、レティシアさんのお腹の中にはすでにブルーさんのお子さんがいらっしゃったようです。
気まずくなったのは実はそのことが原因だったのですが…」

「ブルーが結婚を?しかも子供が…?!」



それは、意外でありとても衝撃的な話だった。
もしかしたら、ブルーは天界へ帰ることを諦め、人間の女と所帯を持つことを選択したのか?

だから、私を探そうともしなかったのか?

目の前が暗くなる想いだった…

「レティシア」と「クリス」いう名前には聞き覚えがあった。
あの酒場の主人の祖父母の名がレティシアとクリスだ。

ブルーに寄り添うようにして描かれていた若く美しい娘…
あの娘とブルーが結婚したというのか?

しかし、酒場の主人の話によると、レティシアの夫は裏方をしていたクリスだということだったはずだが…
一体どういうことなのか…?

アルフレッドからはそれ以上のことは聞けなかった。

ともかく、レティシアかクリスという人物を探すしかないのか…
しかし、どこから探せば…



(……そうだ!!)

私はジェロームの屋敷へ戻った。

そうだ。
あともう少し、過去へ戻れば良いのだ。
ブルーが失踪する前に戻れば、探すのは簡単なことだ。
それに、万一、ジェロームが追って来たとしても私がすでに違う時代へ行っていれば私をみつけることは出来ないはずだ!

ジェロームとのつきあいにもいささかうんざりしていた。
とても危険な男だということはわかっていたが、彼が追いかけて来る前にブルーと会い、天界へ戻ってしまえば事は済む…
鏡が手に入った今、彼にはもう利用価値はない。
今後、一緒にいる必要等もう何一つありはしない…


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