第7章…side ノワール2
今、どのくらい過去へ来ているのかはわからないが、うまくいけば、ケイゼル家にはエルマンの祖父・アルフレッドがいるはずだ。
ブルーのことをたいそう気に入っていたというアルフレッドが…
*
「ブルーさん…!!
どこへ行ってらっしゃったのです?!」
ケイゼル家にいたのはエルマンではなく初老の男。
それがエルマンの祖父のアルフレッドだということは、すぐにわかった。
「いえ…アルフレッドさん、私はブルーではありません。
彼の双子の兄弟のノワールという者なのです。」
「双子の…!
そうだったのですか!
言われてみればどことなく雰囲気が違いますが…しかしブルーさんに瓜二つだ…
髪の色が違うとはいえ、まるで同じ人のように思えます。
それにしても、あれから十年は経つというのに、あなたはあの当時のブルーさんとまるでお変りじゃない…」
「そうですか…?
心が未熟なままだと年を取らない等と言いますが、私もそのクチなのかもしれませんね…」
一瞬、ひやっとしたが、私のつまらない言い訳に彼はなんとなく納得したようだ。
「いやぁ、それにしても見れば見る程、ブルーさんにそっくりだ…!
それで、ノワールさん…ブルーさんはお元気なのですか?」
「実は、私はそのことをお尋ねにまいったのです。
私達はある事情から離れておりまして、ずっと彼を探していたのです。
ある筋から、あなたが彼のことをご存知なのではないかという噂を耳にしまして…」
「そうだったのですか…」
「それで、彼は今、どこに…」
「…それは私も気になっていた所だったのです。」
そう言って、アルフレッドはぽつりぽつりと話し始めた。
アルフレッドの話によると、ブルーは興業先の町で突然姿を消したということだった。
「あることから、私と一座の間にはちょっとしたわだかまりのようなものが出来てしまいましてね…
それからは興行を見に行く事もほとんどなくなりまして、彼らとは疎遠になっていたのです。」
そんなことから、彼がブルーの失踪を聞いたのはずいぶん経ってからのことだったという。
その後、一座は半年もしないうちに潰れてしまい、それからのことはまるでわからないというのだ。
「彼が失踪したのどのあたりのことなんでしょうか?
それと、彼と親しかった方のことはご存知ないでしょうか?」
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