第6章…side ブルー1
気が付けば、あれから一ヶ月程の時が流れていた。
エスポワール一座を逃げ出してから、私は船を乗り継ぎ新たな大陸を目指していた。
この長く退屈な船旅ももうじき終わりを告げる。
あと数日で、私がまだ足を踏み入れたことのない大陸へ到着するのだ。
(……一座はどうなっただろうか…)
レティシアに対しては何の気持ちもなかったが、勝手に一座を抜けたことに対してはいささか心が痛んでいた。
仮にも私はエスポワール一座の看板スターだったのだから…
私を目当てに来ていた者も多かった。
ダンスで観客を楽しませていたレティシアも、身重のため、この数ヶ月は舞台には立っていない。
私達二人を失った一座は、しばらくは大変かもしれない。
しかし、だからといって、あのレティシアの想い通りになるのもやはり納得がいかない…
あのまま一座にいたら、間違いなくレティシアと結婚させられてしまうのだから、やはり逃げ出すしかなかったのだ。
それにもう終わったことなのだ…
今更、考えても仕方のないこと…
これからは、地道に働きながらノワールを探すことにしよう…
それから、数日後、船は新たな大陸に着いた。
今までの大陸より寒い気がするのは、季節のせいなのかそれとも土地柄のせいなのか…
多少の金は持っていたからすぐに生活に困るようなことはないが、それもいつまでもつかはわからない。
私は早急に仕事を探したいと考え、仕事にありつけそうな大きな町を目指すことにした。
私の蒼い髪はどこへ行ってもそれなりに目をひくようだが、ただじろじろと見られるだけで声をかけられることはなかった。
この地では私のことを知る者がいないのだとわかり、安堵する。
いくらなんでもレティシアもこんな所まで追いかけて来ることはないだろう。
私の行き先に見当を付けたとしても、この大陸までの定期船が出航するのは一ヶ月後だ。
その間に、出来るだけ港から離れた町へ行っておけばみつかることはないだろう。
いくつかの田舎町を通り過ぎ、この大陸に着いて十日ほど経った頃、私はある町に辿りついた。
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