第5章…side ノワール14


部屋に戻ると、私は真っ先に熱いシャワーを浴び、身体の隅々まで念入りに洗った。
洗っても洗っても、クラウディアのにおいがこびりついているような不快感が拭い去れなかった。

こんな調子で一週間つとまるのだろうか…

つい、そんな弱気なことを考えてしまったが、よく考えればただの一週間なのだ。
一生のうちの一週間等、砂漠の一粒の砂粒程のものでもない。
たった一週間だけあの女のいいなりになれば、鏡は私のものになるのだ。
私は自分に言い聞かせるように、心の中でそう考えた。



しかし、それからの一週間は吐き気のするような日々だった。
道具を使っていたぶられたり、怯えて泣き叫ぶ年若いメイドを無理矢理抱けと命じられたり、私のプライドをズタズタにするようなことばかりを強いられ、その度にクラウディアは狂人のような笑い声をあげて悦んだ。

あの女はまさに悪魔だ…!
彼女への憎しみは頂点にまで達していたが、私はその気持ちを無理矢理に封じこめ、ついに一週間の最後の日がやってきた。



「ほら、あんたがほしがってたのはこれだろう。」

クラウディアが蔵から鏡を持って来ていた。
ジェロームの屋敷にあったものと同じあの鏡だ!
私とブルーとを会わせてくれる唯一の手段……




「本当に物好きだよ。
こんな鏡のために、あそこまでするなんて…
物好きどころじゃあないね。
あんたは馬鹿だ。大馬鹿だ!
……さて、今夜はどんな方法で楽しませてもらおうかねぇ…
その前にあたしは少し寝るよ。
ここんとこ、少し無理をしすぎたようだ。
起きたら可愛がってやるから楽しみにしておきな。」

そう言ってクラウディアは鏡を持って寝室に入っていった。



(ついに今日であの鏡が手に入る…!!)



鏡のためとはいえ、私もよくぞここまで耐えられたものだ。
しかし、地獄のような生活も今日で終わりなのだ…!
そう思うと、全身におかしな震えが走った。
相当に疲れていたため、クラウディアからお呼びがかかるまで私もしばらく眠ることにした。



どのくらい経った頃なのかはわからない…
不意に頬を打たれ、私は目を覚ました。



「ノワール、行くぞ!」

「ジェローム!どうしてここへ!?」



外はいつの間にかすっかり暗くなっていた。
こんな時間まで呼びに来ないとは、クラウディアもよほど疲れているのか…
ジェロームに急きたてられるようにして馬車に乗り込むと、中には女性が乗っていた。

月灯りを照らし出されたその顔は、クラウディアのものだっだ。
クラウディアは眠っているようだ。

しかし、クラウディアが、なぜ、ここに?


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