第5章…side ノワール12


「実は、あなたの持っていらっしゃる鏡のことでお願いが…」

クラウディアは、私のその言葉を鼻で笑っただけだった。
再び、クラウディアの視線が私の全身を舐め尽くす…



「見た目はまぁまぁだね…
とにかく…話だけは聞いてやるよ。入んな。」

クラウディアに背中を小突かれ、私は屋敷の中へ入った。

屋敷の中はクラウディアの人となりを現すかのように、いかにも悪趣味な様相を呈していた。



「あんた…あの鏡がほしいんだって?」

「はい。ぜひともあの鏡を私に…」

「あんなものをねぇ…
つまらないものをほしがるもんだね。
まぁ、そんなことはどうでもいいけどさ。
で、その代わりにあたしには何をくれるんだい?」

「金ではいけませんか?」

「見ての通り、あたしは金には困っちゃいない。
屋敷も毛皮も宝石もいくらでも持ってんだ。
ありきたりのものなら、ほしくはないね。」

「では、あなたは何がほしいとおっしゃるのですか?
何を持ってくれば、あの鏡を譲っていただけるのです?」

「そうだねぇ…
あたしは退屈な毎日に飽々してるんだ。
あたしを楽しませてくれる玩具があれば、あたしも気分よくあの鏡をあんたに譲ろうって気になれるかもしれないねぇ…」

クラウディアの口許に嫌らしい笑みが浮かんだ。

私はこの女が欲するものを瞬時に悟った。
それと同時に、鏡がすぐに手に入ることを確信した。



(女なんて容易いものだ…)



「では、クラウディアさん…
私をあなたの玩具にしてはいただけませんか?」

「あんな鏡のために、あたしの玩具になろうっていうのかい?」

クラウディアは声をあげて勝ち誇ったように笑っている。



「ほぅ〜、たいした男だね。
あたしを楽しませる自信があるとはね。
その自信通り、あたしを楽しませることが出来たら、あんな鏡、いつでも譲ってやるよ!
……ただし、あたしを楽しませるのはそう簡単なことじゃないよ…」

「本当ですか、クラウディアさん!」

「ああ、本当さ。
メアリー、皆をここへ呼んできな!」

クラウディアは、使用人達を部屋に集めた。

一体何をするつもりなのだろうかと考えていると、クラウディアはその場で着ているものを脱ぎ始めたのだ。


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