第5章…side ノワール10


次の日から、彼の態度は明らかに変わった。

若くとも若くなくとも、美しくとも醜くとも、目的のためにはいろいろな女を利用してきた私だ。
別にそれが男であったとしても、何の問題もありはしない…



「ノワール、何かほしいものはないのか?」

ジェロームは、私を後ろから抱き締めながら耳元で囁いた。



「私はあなたとこうしていられるのなら、他にほしいもの等ない。
ただ、あなたのすべてを知りたいだけだ。」

「ノワール…!
おまえの唇はなんと可愛いことを言うのだ…」

ジェロームは、そう言いながら、何度も口付けてきた。
そして、そのまま肌をあわせる…

この男は、もう完全に私の手の中に落ちている…
ジェロームの瞳を見ればそのことがよくわかった。



「…もっとあなたのことが知りたい…
あなたのすべてを私に教えてくれ…」

「ノワール…」



次の日、ジェロームは私をワイン蔵に連れていった。
そして、意味ありげに微笑むと蔵の奥に積まれてあった樽を動かし始めた。
どけられた樽の下には小さな扉状のものがあり、それを開くと階段が現れた。



(こんな所に隠し階段が…!
もしかしたら、この先に…)



私は胸の高まりを押さえるのに必死だった。

思った以上に長い階段を下ると、そこは湿った狭い地下道になっていた。
置いてあったランプに灯りを灯し、しばらく進むと大きな扉に突き当たった。
ジェロームは、ポケットから鍵を取り出し、その扉を開ける。
軋んだ音を立てて開いた部屋はとても広い部屋だった。



「ここに入ったことがあるのは、おまえが最初で最後だ…」

「ありがとう、ジェローム…
しかし、この部屋は一体何のための部屋なのだ…?」

「……ここか?……ここは、時間と空間と常識を忘れた部屋だ。」

「時間と空間と常識…?
ずいぶんと難解だな…」

ここに何か重大な秘密の部屋であることは間違いなかった。
私が知りたかった秘密がきっとここにあるのだ。



「……ノワール…魔術というものの存在を信じるか?」

「魔術?聞いたことはあるが……」

私はわざと関心のない素振りをして見せた。



「やはり、信じておらんのか…無理もない話だがな。
しかし、おまえが信じずとも現実にそういうものは存在するのだ。」

「さっき、時間と空間といっていたが…では、もしかしたら違う時代にも行けるとでもいうのか?」

「あぁ、その通りだ…」

「まさか!」

ジェロームは、薄ら笑いを浮かべる私をさらに奥の小部屋に案内した。
その床には、魔法陣のようなものが描かれ、台に乗った大きな鏡があった。


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