第5章…side ノワール9


冷や汗がどっと噴き出した。
危ない所だった…
これからは、もっと慎重に行動しなくてはいけない。
ここに来て、彼の信頼を損なうようなことになっては今までの苦労が無駄になる。
いや、歌うこと等苦労ではなかったかもしれないが…

もしかしたら裏でこそこそ嗅ぎまわるような真似はせず、真正面から切り出した方が良いのだろうか?
しかし、それだと失敗した時のリスクはとても大きい…

これからどうすべきなのか…
どうすれば、もっと彼の信頼を得ることが出来るのか…



「もう一曲歌いましょう!」

その日の私は多少荒れていた。
今までのようにうまく進まない今回の計画に焦りを感じ、浴びるように酒を飲んだ。



「ありがとうノワールさん!
しかし、あなたはずいぶんと酔っておられるようだが、大丈夫ですか?」

「私はまだ酔って等いませんよ。
ジェロームさん、今日はとことん飲み明かしましょう!」

私はグラスを高く上げ、一気にその赤い液体を飲み干した。

………私が覚えているのはそこまでだ…
どうやら酔って眠ってしまっていたようだ。



「ジェロームさん、すまないが水を……」

ジェロームは、水差しの水を口に含み私を抱き起こすと、私に口移しで飲ませてくれた。



「まだ飲みますか?」

私は黙って頷いた。
ジェロームは再び水を含み、私の口に注ぎ入れた。



「ノワール…あなたは本当に可愛い人だ…」

彼は私の髪を撫で回していたかと思うと、不意に唇を重ねて来た。



……なるほど…こういうことだったのか…
あの熱い視線も、彼がこの年まで独身なことも…
私はその時、やっとその理由を理解した。

これで、彼の心が掴めるのなら簡単なことだ…



「ノワール…愛している…
初めて見た時から、ずっと愛していた…」

「ジェローム…私もだ…」

私はそのまま彼に身を委ねた…


- 45 -

しおりを挟む
コメントする(0)

[*前] | [次#]



中編集トップ 章トップ

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -