第5章…side ノワール7


(……魔術か…
人間の中には特殊な能力を持つものもいるようだが、そのほとんどは陳腐なまやかしだ…
……しかし、もしも本当にそんな力を持つ者がいたとしたら…?!)



私の脳裏に浮かんだのは、ブルーとの時の隔たりのことだった。
まともな方法では、違う時代にいる者と会えるわけ等ない。
しかし、魔術なら…
魔術ならその隔たりを飛び越えることが出来るかもしれない…!

私は、ジェロームとの接触を決意した。

しかし、彼は話によるととても変わった人物らしい。
突然、屋敷を訪ねてはまずいだろうか?
女なら落とすのも簡単なのだが、男ではそういうわけにもいかない…

町をうろつきながらもの思いにふけっている時、後ろから突然声をかけられた。



「失礼ですが、ノワールさんではありませんかな?」

低く響きのある声に振り返ると、そこにはジェロームの姿があった。



「やはり、ノワールさんだ…!
初めまして。
私はジェロームと申す者です。
ケイゼル様のパーティであなたを見て、すっかりあなたの虜になってしまった者の一人です。
こんな所であなたにお会いにできるとは、私は実に運の良い男だ…」

間近で見るジェロームの顔は、完璧と言えるほど端正な顔立ちをしていた。
年は40過ぎくらいだろうか…?
彼の灰色の瞳をみつめていると、術にかけられそうな気分になってくる。



「ここでお会いしたのも何かの縁…
よろしければうちで夕食でもいかがですかな?」

私にはその誘いを断る理由等なにもなかった。
私はジェロームの馬車に乗り、誘われるがままに屋敷へついていった。

ジェロームの屋敷は今までに見たこともないような立派なものだった。
資産家だとは聞いていたが、まさかこれほどまでとは……
私は、着くなり屋敷の大きさに圧倒されてしまった。



「素晴らしいお屋敷ですね…」

「たいしたことはありませんよ。
広いばかりで…」

「ご家族は…?」

「そんなものは煩わしいだけです。
ここにいるのは私と使用人だけです。
私はそれだけで満足なのです。」



夕食もこの家に似つかわしいとても豪華なものだった。
シェフも相当に腕が良いと思える。
しかし、ジェロームはそんな食事にもほとんど手を付けることなく、ワインのグラスを傾けているばかりだった。



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