第5章…side ノワール3
「なら、やっぱり間違いない!
親父はこの言葉の意味が死ぬまでわからなかったって言ってたよ。
俺が考えるにゃ、俺の祖母はあんたの祖父さんに恋こがれていたが、結局は相手にされず祖父と結婚したってことなんじゃないか?
あんたの祖父さんと祖母が寄り添ってる絵を見たら、いかにもそんな気がするよな。
第一、祖父の絵は一枚っきり…しかも隅っこにちょこっといるだけなのに、他はあんたの祖父さんのものばかりだからな。
あんたの祖父さんはあの通りの男前だ。
相当の女泣かせだったんじゃないか?」
「そんなことが…
それで、私の祖父とあんたの祖父母はいつ頃まで一緒だったんだろうか?」
「そのことについては聞いたことがないな。
とにかく、親父が小さい頃に一座は潰れたらしいぜ。
それで、祖父は商売を始め、それがけっこう当たったらしいんだがな。」
「あんたはこのあたりの出身なのか?」
「俺や親父が生まれたのはこの大陸だが、祖父母は、隣の大陸の出身だと言っていた。
一座がこの大陸に興行に来ている時に親父は生まれたそうだ。」
「なるほど…」
本当に良かった…
この男と出会ったことで、ずいぶんといろいろなことがわかってきた。
ブルーは今より約百年近い昔の時代にいる。
場所的にいうとは隣の大陸とこの大陸だ。
彼と時間の壁があることはショックだったが、今まで何一つみつからなかった手がかりが…それもこんなにも確信的な手掛かりがみつかったのだ。
ここから少しずつ彼の足跡を辿っていくことが出来るだろう…
「それで…厚かましい話なのだが、祖父の絵を一枚譲ってはいただけないだろうか。」
「あぁ、良いぜ。
どれでも好きなのを持っていきな。」
店主は私の申し出をいとも簡単に受けてくれた。
私はレティシアと呼ばれる女性とブルーが描かれたものを選んだ。
レティシアの線からもなにかの手掛りがみつかるかもしれないと考えたからだ。
絵を手にすると、裏にアルフレッド・D・Kという署名をみつけた。
「これを描かれたのは?」
「あぁ、なんでもどこかの貴族だとかいう話だったな。」
……また一つ手掛りがみつかった。
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