第4章…side ブルー10


「……あ…あぁ、クリステルさんはお噂以上にお美しい方だ…
そういえば、クリステルさんはピアノも素晴らしい腕前だそうですね。」

「まぁ、ピアノが?
いつかぜひ聞かせていただきたいわ!」

「レティシアさんこそ、踊りの名手だということじゃありませんか。
ステージで拝見するのを楽しみにしてますわ。」

「……それが…」

「どうかなさったの?」

「実は、私はしばらくステージをお休みすることにしたんです。」

「えっ!なんだって?
俺は何も聞いちゃいねぇぞ!
なんだって休むんだ?」

座長は誰よりもその言葉に驚き、レティシアに理由を尋ねた。



「……座長…ごめんなさい!
こんな所で言うのもなんなんですけど…
私達、実はずっと以前からつきあっていて…
それで……赤ちゃんが出来てしまったんです!」

「な、なにぃ…?!」

一瞬目を丸くした座長だったが、それがレティシアの言っていた策だとすぐに気が付いたようだ。



「……そうか……
よくも今までずっと騙しててくれたな!
しかも、こんな大切な舞台に穴を空けるなんてことはプロとして許されることじゃねぇ!!
…とはいっても、生まれてくる赤ん坊に罪はねぇ…
仕方がない…
大事にして元気な子を産むんだぞ!」

「はいっ!座長!」

座長の下手な芝居にも気付かれることはなく、クリステルは眉間に皺を寄せ、肩を震わせながらその場を去っていった。



「待ちなさい!クリステル!」

その後をアルフレッドがあわてて追いかける…

二人の背中を見送りながら座長が言った。



「とりあえずはうまくいったな…
ただし、大変なのはこれからだ。
それよりおまえ、あんなこと言っちまって、本当に舞台には出ないつもりなのか?」

「ええ、子供に何かあっては大変ですから。」

「何かって…あれは芝居だろう?」

「いいえ…私のお腹の中には本当にブルーの子供がいるのです。」

レティシアの言葉に私は呆然とした。



「レティシア、今、なんと?」

「だから…私のお腹の中にはあなたの子供がいるって言ったのよ…」

レティシアはなおも平然とそう言い続けた。



「…お前ら……ちょっと来い!!
あ、クリス!
マイクを呼んでこい!」

私にはレティシアの真意が理解出来ないまま、座長に突き飛ばされるようにパーティ会場を抜け、宿へ連れて行かれた。


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